「ミンウさまミンウさま!」

ててて、などの形容詞が付きそうな歩き方で駆け寄ってきた幼い愛弟子は、私のローブの裾を握ってにこりと笑った。旅の疲れも癒されるというものだ。この笑顔には、陳腐な表現ではあるが、どんな白魔法も敵わない。


「お帰りなさい、ミンウさま!お怪我はありませんか?」


幼いながらにも、彼女はなかなかしっかりしている。私はこの娘をたいそう気に入っていた。
私は緩慢な動作で細々とした装飾を外していき、彼女は小さい腕でそれを受け取る。最後にローブを預けると、私の半分しかないであろう彼女の腕は飽和してしまった。たたた、と奥の部屋へ仕舞いに行く。窓辺へ寄れば、先日枯れかけていた花瓶の花が取り替えられている。生き生きと咲く野薔薇である。
よく出来た弟子だ。


「ヒルダさまにご報告はなさったのですか?」
「いや、これからだ。どうもここが気にかかってしまってね」


そう言えば彼女は大きな瞳をまあるく開き、やがて淋しげにその瞼を伏せた。


「やはりわたしでは…頼りないのですね」


次に目を丸くするのは私の方である。まさかそんな風に取られるとは思わなかったのだ。


「そんな意味で言ったのではないよ。それに、やはり…とは?」
「お城の兵士の方が言っておられました。ミンウさまのような素晴らしい魔導師が、わたし…こんな、まだ子供の、しかも女の子を弟子にしているなどおかしいと。邪魔になるのではないかと」


悔しそうに悲しそうに小さな拳を握りしめ、やはり、わたしはお役に立てないでしょうかとつぶやく。
わたしは片膝を下り今にも降り出しそうな天気のその顔を見上げる。


「私は信頼するに足る人間であれば、年齢も性別も関係ないと思っている。現におまえはとても優秀だ」
「そうでしょうか…」
「ああ。だから周りの言葉など気にすることはない。それに、私が真っ先にここに帰ってきたのは、おまえの笑顔が見たかったからなのだよ。だから笑ってくれ」


微笑んでみせればほら、もう太陽が顔を出した。
私は立ち上がり、片手ですっぽり覆い被せてしまえるほどの頭を撫でてやる。気持ち良さそうな彼女には、やはり笑顔がふさわしい。


「では私は王女に報告をしてくる。今日の夕飯は何かな?」
「ハンバーグです!…あ、豆腐ハンバーグだから、殺生はしてないです」
「それは楽しみだな」


行ってらっしゃいませ、の声を背に受け私は屋敷の一室を出た。王女の元へ歩くなか私は考える。
さて、あの子に言葉を投げたという兵士。どうしてくれようか。



100106
ロリコンミンウさま
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