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「槇火紫さん、幸村くん一緒の班になってもいいかしら?」
『どうぞー』
「いいよ」
「ありがとう」
ザワザワ と少々五月蝿くなる調理室。野山望。前、教室で出会って以来の遭遇である。あれから野山さんが居るファンクラブは、私に対して警戒を強める形を取った事で彼女が単独行動する事が無くなった為だ。ファンクラブ幹部として存在はしているが、積極的な活動は進んではしない。そりゃあ、彼女の本心は前に聞いた通りだからだ、そろそろ野山さんが行動を起こすだろうとは予測していたので普通に受け入れる。ファンクラブとなっているが、比較的に自分から話しかける事が多いので幸村くんもすんなりと了承する。道具も材料も取って先生が来るのを、本日の献立を見ながら待つ間に2人はニコニコ笑顔で会話していた
「野山さんもやっぱりあの不細工顔に限界だったんだね」
「えぇ、そうなの。本当は先週離れるつもりだったんだけど…周りの安全も考えて一週間ずらしたの」
「そうかー。そうだよね、槇火紫さんに何かあったら本末転倒だよね」
「そうなのよ。だから今日にしたの、本当は0.01秒でも早くあの不細工から離れたかったのだけれど…槇火紫さんに何かあったら皆さんに申し訳が立たないと思って…」
『私よりも野山さんの方が大変になるでしょう、これから』
「大丈夫、城海さんも天空寺さんも私に仕掛ける事何てしないわ。するのは馬鹿の一つ覚えの奴等だけだよ」
『…』
黒い笑みで握り拳を作った野山さんの笑顔は、たいそう恐怖を感じるモノがあった。そこまで言い切れる理由は知ってる。城海にくっに付いて過ごして来た事で、野山さんは勝負事が強い事を…それは城海を上回っている事も……
「で?城海さん、まだやるの?」
「っく!」
「今まで城海さんが私に勝てた事一度も無いんだからもう止めたら?自分の名誉の為にも」
「うそ、だ、ろ…!?あの城海が野山一発も入れる事無くやられるとか?!」
「まじかよ?!」
話を聞きつけた城海がやって来て喧嘩が始まったが、物の数分で決着がついた。城海の影に隠れている様な存在だと思われがちの野山さん。だが本当の所は圧倒的に強い力を、城海で隠す為にそうした立場に居るだけなのだ。城海との実力差は圧倒的と言わざる終えない。それほど彼女は強いのだ。まぁ、私とやった場合はもちろん私が勝つのだが、それでも今の立海生の中で実質彼女を倒せる人物はいないのだ。しかも、野山さんはファンクラブ内情を知り尽くしている、情報収集に回っていた事がこんな形で裏目に出てしまったのだ。野次もどんどん集まって来る中で、痛子はとても驚いていた。次の授業が始まるまで後少し
「野山さん。先に行くね」
「うん、ごめんね。私のせいで時間潰させちゃって…」
「いいよ、それに野山さんのせいじゃないから」
「メールで伝えた通り、もう上田を可愛いって言って持ち上げるの、正直言って無理。やるなら私、親友止めるって言葉嘘じゃないから」
それじゃあ。そう言って去った野山の言葉は真剣で誰も嘘は言って居ないと思ってしまうものだった
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