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この世界に長居は無用なので、手っ取り早い行動を取る。祖父や祖母、両親からはあまり力を使うなと言われているが関係ない人をこの場所にずっと留めて置く事の方が最優先だと私は思って居るので、約束を破る。自分1人ならば全然力を使わずにでも余裕で抜け出せるので野山さんを外へ出したら後は自力で何とかする。アウルの背中に乗り目的地まで走って貰う。目的地上空からはキラキラとした夕日の光が灰色のこの世界に降り注いでいる穴が見つかった。穴の高さは結構あり、大きさも小さかった。大分危なかったと思える。下からちょっかいを掛けられたら嫌なので、ビルの屋上でアウルの背中から降りてアウルに灰色達を追っ払ってもらう。影の中に戻って来ているだろう奴に声を掛ける
『おーい、虞簾。上の穴に行きたいのだけど連れってくれる?』
≪いいよ。暇だし≫
「わっ!大きい…鷲?」
『鷹と鷲の間に生まれた子。まぁそれでも4mは大きいよね』
「えっ、4mもあるのこの子」
≪斬奈、早くしないと穴閉じちゃうよ≫
『そうだね。それじゃあ野山さん。虞簾の背中乗って』
乗る? と首を傾げている野山さんをほぼ無理矢理の形で虞簾の背中に乗せると私は、腰の刀に触れれば1対の黄金色に輝く翼が背中に生えた。翼を羽ばたかせ天へ舞う。続いて野山さんを乗せた虞簾が舞い上がり上空にある穴へ向かって飛んで行く。視線だけ下に向けるとアウルが灰色を1匹捕えた姿が見ていた。さすがアウル。次の仕事を分かっている。穴の前まで行くと手が入るぐらいの大きさでビックリした
≪小さいね≫
「私が見た時はもっと大きかったよ」
『時間が経つと穴消えちゃうんだよ。抜けるにはもうちょっと大きくしないとね』
≪手 しか入らないもんね≫
『そうそう』
「どうするの?」
『まぁ、見てて』
使うなと釘を刺されてある力を使えば虞簾の顔が顰められる。分かっているよ、せっかく元の世界に変える為に溜めた力を使えばその分この世界に留まらないといけない事ぐらい。けれど目の前で助けられる命を助けられないのは嫌だ。力が溜まらなかった場合の最終手段はまだあるんだからそんなに怒らないでくれ。力を使用して、穴を拡張。野山さんを表世界へと戻らせた
「槇火紫さんは?」
『私と野山さんの入った場所が違うから私はこの穴からは出られないんだよ』
「そっか…じゃあここでお別れだね」
『うん、さよなら』
「うん、バイバイ。また明日」
≪“また明日”だってさ≫
『…うん』
表世界へと帰らせた野山さんはバイバイ と言って、また明日と付け加えた。明日も学校で会うがクラスに居た所で声を掛ける事も顔を合わす事もしない、ただのクラスメイトの関係に戻るだけだからと言う私の含めた言葉とは違う優しさを感じられる言葉だ。さてと、あまりのんびりしていると帰ってからが大変だ。アウルの元へ行けば大げさな反応の灰色が迎えてくれた
≪な、七色が何の様だ≫
『私の出口何処?』
≪そんなの知らねぇべ≫
『私、気は長い訳じゃないの、早く言いなさい。第一私が気付かないとでも思った?』
≪…も、戻り方はいつも通りだべ≫
『そう、分かったわ。アウル。離してあげて』
≪了解しました≫
あからさまな恐怖を私に向ける灰色は顔を青くさせてビクビクとこちらを見上げる。その態度もイラつくがそれは置いておくとして出口の居場所を聞き出す。勝手に引き込んどいて白を切るつもりの様だ。どれだけ人の気に障るか、こいつ等は分かっていない。ならば、実力行使に出るまでだ。腰に着けた刀を素早く抜き灰色の首筋でピタリと止めれば灰色は口を開いた。帰り方が分かればもう用はないので、離す。やはり逃げ足だけは早い
『さぁ、帰りましょ』
家の近くにあるカーブミラーにお邪魔して表世界へと帰還する。誰もいない事を確認した筈だが、弟に見つかった。反対側の世界に行った事を話させない様にする為賄賂を贈るが、結局彼のハイスピードメール打ちによって弟に見つかった時点で家族にバレていたのは帰ってからの説教で知る
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