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“退魔師”はそれぞれ地域事に総纏めを行う一族が存在する。私達槇火紫家は関東地方(新潟・福井を含む)を纏める七大一族の1つ。【守銭奴の槇火紫】とあまり名乗りたくない通り名がある。金に汚いとは言われないが、退魔をする場合の金額が他とは格段に違う事からそんな不名誉な感じの通り名になったそうだ。しかし、七大一族の中では折り紙付の実力を持つ一族なので高額でも退魔を頼む人は後を絶たない。高額な金額提示はあくまでそれを確実に払える人達のみに向けてで、一般人には高額な値段は表示しない。ただし、危険と判断されれば別。一般人からも高額な値段は頂く。どんな手練れであっても、“絶対”はあり得ないからだ。死んだらそこまで。命は値段じゃ決められない。けどそれだけの金額を頂く事は、こちらもそれに見合った覚悟がある証拠でもあるのだ
≪…≫
『何処?』
≪…≫
『分かった、案内して』
商店街を駅方面へと向かう途中に、黒銀の毛並み4つの瞳を持つ巨大な狼が物陰から現れた。狼はじっと斬奈を見つめる。顎で意思を示せば斬奈は案内を頼んだ、狼が走り出すと同時に自分の影から身の丈ほどの杖を取り出し呪文を唱えると杖は2本の刀と剣へと変化した。いつの間にか腰に付いたベルトに2本の鞘を固定し終わると、狼が案内したかった駅へ着いていた。駅の改札口で1人の少女が灰色の動くモノに囲まれて居るのが見えた。このままでは少女はアレに“喰われて”しまう
『アウル。灰色達理性を失っている。戻せないから消せ』
≪仰せのままに≫
この世界の住人である灰色と呼ばれる目の前の生き物、正確には生きてはいない。人の“負”の感情が形を成した彼等は、いつもの虚ろな瞳を今はしておらず、狂気渦巻く欲望の瞳で少女を見つめ迫っていた。“灰色”っと言っても大きく分けて2種類居る、今目の前に居る負の感情で形成した彼等と幽霊や妖怪などもこちらの世界では彼等と対して変わらない姿をしている。幽霊や妖怪のみ表側の世界に干渉する事が可能だ、こちらで人を襲うのは大抵表側へ行けない彼等だけ。彼等は人間を食べればその人間に成り代われて表側で生きられると信じて居るのだ。そんな訳ないのに。人間がより住み易くなる様にと大昔の神様が、アダムとイブが地上に降りた時から共に存在するこの世界。負だけを掃溜める世界には輝く未来など訪れないのだ。跳び出した灰色達の列に突っ込み灰色を薙ぎ倒して行く。アウルを視界に入れた灰色達の群集は蜘蛛の子の様に一瞬で散り散りなって逃げだした
『全く、逃げ足だけは早いんだから…。大丈夫だった?』
「は、はい…って、槇火紫さん?」
『え、あっ。野山さん』
「…」
『…』
灰色達に襲われそうになって居たのは同じクラスの野山望さん。数時間前に一触即発しそうな場面に居た為、ちょっと気まずいが野山さんの事を思えばこんな所に長く居続けるのは彼女を死へ誘う事になる。灰色達を散らばせただけなのでずっと同じ場所に留まって居ればまた彼等は性懲りも無く現れる。まぁ、私とアウルが居る限り手を出す様な愚かな事はしないが馬鹿はどんな世界にも居る為、絶対ではない。この世界に絶対安全な場所など存在しないのだ。野山さんは足を挫いている様で立つ事が出来ない様子なので嫌だろうがおんぶで離れる事にした
「槇火紫さん、ここは何処?」
『うーん、何て言ったら分かり易いかな…』
≪“鏡の中”がよろしいと思いますよ≫
「わ!犬が喋った…」
≪“犬”ではなく“狼”です≫
「あ、すみません…」
『アウル、細かい。そうね“鏡の中”は良い表現かも』
「?」
隣を歩く巨狼のアウルははっきりさせたい性分なので と言って黙った。背中から伝わる野山さんの感情を読み取りながら話を進める。狼が喋る事にも対してだが彼女は場所に適応する能力が高い様だ
『“合わせ鏡の悪魔”って知っている?』
「深夜0時に合わせ鏡をすると悪魔が現れて願いを叶えてくれるってあれ?」
『そう、それ。ここはねその合わせ鏡の悪魔が住む世界。現実世界のこの世界を知っている私達はこう言っているは“反対側の世界”と』
「“反対側の世界”…帰れるの?」
『大丈夫、帰れるよ。ううん、絶対に帰してあげる』
いきなりの突拍子もない話で混乱するかと思ったが、ここ何年か度々神奈川では都市伝説が広まっては消えの繰り返し。そんな事があり子供達の間では結構すんなり受け止める事が出来る様だ。都市伝説には出鱈目も存在するが本物も存在する為、姉弟で色々と調べさせられていた。本物に出会った場合、こちらの世界に連れて行かれるのを阻止するのが目的で、危険性がないかを調査で判断する為に
『野山さんがこの世界に入った時居た場所って何処?』
「えっと…北口から近いドラッグストア前だよ」
『そう、分かった。ならそこに向かおう』
「そこに何かあるの?」
『あるよ、野山さんがこちらの世界に落とした穴が』
頭だけ動かしておんぶしている野山さんを安心させる様にニカッ と笑えば、野山さんは首を傾げていた
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