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帰っている途中に弟の真黒からメールで“ねーちゃん、牛乳無くなったから買って来て”と来た。もう少しで帰り着く筈だったが、Uターンで商店街を目指す羽目になる。真黒よ…お前、自分が飲み干した牛乳を姉に買って来させるとはさすが我らが一族だ。とりあえず目指す場所が家から商店街へと変わった

『(牛乳、コーラ、ヨーグルト、アイス、ポテトチップス、羊羹、煎餅)よし、これで全部だ』

商店街にあるスーパーへ入った途端、ほぼ同時に他の家族からもメールで欲しい物を買って来る様に頼まれた。妹と弟以外はそれぞれ自分達の仕事場に籠っている筈なので弟の真黒が連絡しない限りは分からないが、お仕事がお仕事なので皆さん、勘はそこらに居る一般人より鋭い筈だ。なので言われる前にご家族の皆さんは送って来たのだろう。まぁ、一番有力な事は私が夜ご飯の用意をこの時間になってもしていないと言う事でがあるのだろうが。それも今全部買い終わったのでさっさと帰る事にしよう。バチン そう音がした瞬間に周りの時間が止まり、辺り一面白と黒と灰色の世界へと彩が変化した。どうやら私は“反対側の世界”に招かれてしまった様だ

『しまった…』

こりゃあ、また、帰るのが遅くなってしまう。スマぬ家族の皆よ。晩御飯出前でも取っていてくれ!

***



『あーぁ、まあいいか。ゆっくり出口を探そう。ちなみに私の背後には出口は無しと…』

「周りを見て来ます」

『お願い』

くるり と後ろを振り返ってもそこには何も無かった。太陽の無い灰色の空だが影は出来る。影の中から私に向けて放たれた言葉に返事を返せば、私の影は波紋の様に浪打黒い塊が次々と飛び出し外へと羽ばたいて行った。何処となく薄くなった影を見つめ歩き出す。“反対側の世界”と呼ばれるこの場所は、我々“人”が住む世界を“表側の世界”とした時ちょっとずれた別の次元に存在する世界だ。一般的に言えば“鏡の世界”と言えば一番伝わり易いだろうか。反対側の世界では全てが表側の世界の物が反対に存在する。初めて迷い込んでしまった人達は大抵気付くまでちょっと時間が掛かる。まぁ、早く気付いた所でこの世界から出る方法を知らなければ出る事は不可能。出られなければ“死”を意味している。9割方の人間は出る方法を見つける前に、この世界の住人に殺されて終わりだけど1割だけ助かる人間が居る。それは私の様に反対側と表側を行き来出来る、特殊な能力を持つ者達に助けて貰う事だ。だが反対側の世界が一般的に知られていない為、直接助けを求められる事はほぼ無い。私達の力を頼られるのは一般的に見て、退魔の仕事ぐらいだ。そう、私の一族は“退魔師”と呼ばれている存在だ


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