11

実験室での出来事があった為さすがに今日は仕掛けて来るだろうと思って過ごしたが、放課後になっても誰も何もして来なかった

『…帰ろ』

ちょっと期待していただけに淋しい気持ちになる。とぼとぼと歩きながら玄関へ向かうと、私の下駄箱の前で女子が集まっているのが見えた。これは!とテンションが上がったのでとりあえず話し掛けてみる。ちなみに私はマゾではない

『邪魔なんだけど』

「っ!?」

「槇火紫、アンタ幸村くんを唆したんだってね」

『唆す?授業の話をしただけで城海さんにはそれが唆すになるの?』

「優しくされたからっていい気になんなよ」

「貴女が可哀想だから、話し掛けられただけですわ。あまり調子に乗ると我々ファンクラブ容赦しませんわよ?」

『どう容赦しないの?今の所ファンクラブがやって来たのって私からすれば生温い事ばかりなんだけど』

「フフ…。まぁ、今日は忠告だけですのでこれだけで止しときますわ。行きますわよ。皆さん」

居たのはファンクラブ会長の天空寺燦奈とそのお友達城海真央、野山望、陸璃瀬楽。あからさまに怖がってC組傍観主の夏目希々愛の後ろに隠れた自称お姫様上田音姫の6人だ。夏目希々愛が今日のこれを仕組んだのだろう。夏目は黒幕主気取りの傍観主である。調査でファンクラブ会長の天空寺さんとは仲がいいのを知っているので、上田が夏目に言い夏目が天空寺さんに伝えたのだろう。ファンクラブ会長が直々に出て来ての、制裁などをきっと痛子達は期待していたのだろうがそれは無く。忠告だけして痛子達を残して4人は下駄箱から去った。4人が遠のいたのを確認して呟いた

『ダッサ』

「!?」

「何ですって!?」

『ダサいって言ったの。こんな所で目立つ行動なんてしないわよ、アンタ達みたいに馬鹿じゃないんだから』

「な!」

「わ、私が叫べば精市達が駆けつけてくれるのよ!それでもそんな事が言えるとかそっちの方が馬鹿じゃない!!」

『馬鹿はお前だ。テニス部は部活中でお前の悲鳴を聞いてここまで来られても最低10分は掛かる。反対に私の味方である先生方は、悲鳴を聞いてここへ辿り着くのに3分だ。テニス部が来るまで後7分間にお前達は先生達に対して説明出来るの?悲鳴をあげた理由を。出来ないでしょ?先生達から目を付けられている貴女達がどんないい訳をした所で、私が居る限り貴女達の弁解は聞いて貰えないそうでしょ?』

「「っ!?」」

そう言えば上田と夏目はサァ っと顔を真っ青にした。理解力に乏し頭でもようやく理解出来た様だ。現状を。どれだけ今、自分達の居る場所が自分達にとって不利な場所なのかを。天空寺さんはテニス部ファンクラブ会長をやってはいるが、表向きは先生達からの信頼の厚い優等生だ。天空寺さんのお友達である残りの3人もそれぞれ表向きは先生達から信頼されている。そんな彼女達が、先生が直ぐ来れる場所で問題を起す様な馬鹿な事はしない。何て事は誰だって理解出来る事なのに、痛子達のお頭は分からなかった様だ。それ以上言って来ない事のでもうちょっと追い詰めてみた

『上田、半年前別れたんだって?幸村くん言っていたけど…』

「!?」

「そ、そんな訳ないよぅ!嘘言わないでぇ!!」

『嘘?“俺お前嫌い。ブスデブで猫撫で声の気持ち悪いお前なんか嫌い。だから別れろ。これ命令だからじゃあね”って言って別れたのにまだ彼女面している所も更に嫌いって言っていたけど?それでも嘘?』

「っ!う、嘘よぉ!お前なんかモブ使って潰してやるぅ!!」

『上等じゃない。やれるならやってみな』

幸村精市と会話した内容を話せば、夏目は驚き、上田は動揺した。焦り上ずった声は本当に半年前に別れた証拠で間違いない。それに、取り巻きの1人である夏目が驚いている姿を見てどうやら誰にも話していない様だ。幸村精市本人も周りからよりを戻せなど言われるのが目に見えて分かる事なので言っていなかったと分かる。キモいから別れたのにそれを、理解出来ない周りに言うほど彼は愚かではない。完璧に彼は逆ハーから抜け出している証拠だ。頭に血が上った上田は馬鹿丸出しの発言を言ってテニス場へと向かって行った。最後に残ったのはずっと黙った夏目希々愛だけ、改めて痛子に問う

『知らなかったんでしょ、夏目。上田と幸村くんが別れたの』

「何を言っているの、知っていたわよ。驚いていたのは貴女が知っていた事よ」

『ダウト!はい、うーそー!先ほど居た、城海さん野山さん天空寺さん陸璃さん以外はこの事実を知りません。後は当事者の幸村くんだけ。4人は相談されたそうだ、上田から。校内でも有名な仲良し6人組ってアレも嘘だね。だって本当にトモダチなら相談されているはずだよね〜』

「!?」

『それにさぁ、夏目。他の女子からもちょっと遠巻きに見られているでしょ?お前、女子から何て言われているか知っている?』

「ゃっ!!」

『“口軽根暗女”さん?』

「いやっ!!」

『立ち回りが下手なくせに黒幕気取るなよ。お前がなりたいのは傍観主なんでしょ?欲張るからこんな事になってんのよ』

両耳を押さえて夏目は床へ座り込んだ。自分は神様から選ばれた人間だと相手を見下した結果がコレ。何をやっても上手く行くと思い勘違いした結果、夏目は女子からちょっと孤立した存在となった。それを可愛そうに思った上田が、自分の引き立て役として傍に置く形でファンクラブ会長に紹介した事で、夏目はファンクラブ会長と友達になったと思い込んでいた。本当は友達など思われていないなど、夏目はきっと気付いているだろうが、信じたくないのだろう。折角トリップして来たのにこんな結末など認めたくないと言った所だろう。立ち回りが下手糞ならば欲張らず傍観者をやっていれば良かったのだ。傍観者と言う名のモブを。夏目をそのまま放置して私は帰路に着く


.

- 13 -



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -