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午後の授業が開始された。3クラス合同の体育だ。マンモス校の立海では3クラス一緒じゃないと授業が出来ないのだが、授業とは程遠い光景が目の前に広がっていた。総愛され(笑)主の上田音姫(おとめ)を中心に生徒達が群がって、何の種目にするのかを話し合っているのだ。中心に居るDQNネームの彼女は愉悦感に浸っている事が良く分かる

『阿呆クサ、弦一郎。テニスしよ、テニス』

「分かった、斬奈。腕は鈍っていないだろうな?」

『誰に物を言っている訳?笑い話にもならないわよ。立花先生、私達テニスにしました』

「あぁ、槇火紫と真田はテニスか。テニスコートは野口先生がもう待機しているから直ぐに始められるぞ」

隣で阿呆クサい光景を一緒に見ていた弦一郎に声を、掛ければ頷かれ床に置いていたテニスバックを肩に掛けなおした。私自身もテニス以外の選択肢は無かった為、もちろん既に肩には自分のテニスバックを下げている。体育教師の1人、立花先生に話せば名簿に記入され外に居るもう1人の体育教師の野口先生の所へ行くよう指示された。ありがとうございます と先生に伝えテニスコートに向かった。野口先生はコート整備を終えた様で直ぐに始めてもいいとの事だった為先生に審判を頼み開始する事にした

『サーブ権は弦一郎にあげるよ。お前の成長見てみたいし』

「そうか。遠慮なくそうさせてもらう」

『どうぞ』

先生の声で開始され、弦一郎の手から放れたボールはラケットに当たり反対側の私のコートへ振って来た。地面に跳ね返りネットに当たってガシャン と大きな音と揺れが起きた。1球目は様子を見る事に毎回している為、相手の弦一郎もあまり本気を出していない。幼馴染だが最後にテニスをしたのは小学校の卒業式でそれ以来、家が隣同士でも滅多に出会う事が無かった私と弦一郎。2年の歳月はやはり違っていた。あの当時よりも精度・スピード・迫力の変わった弦一郎の球は凄かった、だが…

『強くなった様だね、弦一郎』

「まぁな…しかし、追えぬ速さではないのだろ?斬奈」

『当たり前じゃない』

弦一郎の言葉に私は口角が三日月の様に上がるのを抑えられなかった。ボールが地面を跳ねる音が止まり前のコートからこちらへ放たれる姿を見れば、ボールの回転がコマ送りの様に見え、何処へ放たれるのかの大体の予想ルートが頭の中で瞬時に弾き出される。ラケットに当たりボールがコートの中へ入ってくれば一番有力な場所がヒットした。ボールが地面に着いた時には、コートへ打ち返すベストポジションへ辿り着いていた後で、ボールは私のラケットで打ち返され弦一郎のコートへすぐさま帰って行った。放った打球はガシャンと大きくフェンスを揺らしフェンスに食い込む事でようやくスピードが緩まり止った

「…さすがだな」

『さぁ、弦一郎。時間がない。続きをやりましょ?』

技名なんてない。私が放った打球はガットで優しく受け止め回転を逆に、掛け直した打球をフレームで打つだけの事。男女差を埋める為に考えた着いた結果だ。真剣勝負に能力は使わない。それが私のルールで流儀だ


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