授業は勉強する時間です


『あれ?皆さん普通に授業受けるの??』

先ほどとは打って変わって、ご近所さん達は教科書を開きノートを真面目に取る態勢に入っていた。


Act06≫The time course study

朝の最後の授業である、英語の授業。えらく静かな教室で斬奈は1人キョロキョロと左右を覗いた。両隣の臨也と静雄は真面目さを出す為に、伊達眼鏡を使用して真剣にノートに黒板の文字を写して行く。どうやらこの授業の先生はかなり厳しい様子で、分かっていない斬奈はいい標的になったご様子だ。

「槇火紫。見晴し学園の生徒は、授業中ノートも取らないのか?」

『取らなくても頭の中に丸暗記出来ますから、今は先生の言葉を聞く事に集中しているだけですよ?それに、今やっている英語の教科書は、見晴し学園では1年の3学期にもう終わらせた所でしたので、復習程度に思って聞いていますから。』

「ふん。頭がいいと、努力しなくて済むと言う訳か。」

『いいえ、違いますよ先生。先生の授業では社会に出てためにならないから、聞くだけにしているんです。』

「おい、斬奈!!よせ!!」

「ふん!勝手に言っていればいい、授業に出た時にノートを取っていなければ単位を落すだけだ。見晴し学園の生徒でも例外ではない。」

『アッハハハハ!!!!』

「「!!?!」」

黒板に書かれた英文を途中で先生は止め、振り返ると斬奈と目が合い。斬奈が教科書もノートも開いていない事を知り、言葉を放つ。しかし、斬奈はしれっとした態度で先生に対して受け答えを行った。先生に対しても物怖じしないその態度が気に喰わなかった様で、先生は眉間に皺を寄せて悪態を吐いた。それを聞いた斬奈は自分の中で何かが切れる音が聞こえた事で顔にスイッチが入った。右斜め前に座っている栗太郎がコソッと止め様とするが、大声を発して笑った斬奈を見て、笑顔と言う仮面を着けた斬奈が居た為、関わる事を止めた。

『先生は神ですか?仏様ですか?“退学”と言う2文字を手にして生徒を脅しても良いんですか??』

「!?」

『先生…、見晴し学園の教師が学校に挨拶に来た時。先生ももちろん居ましたよね…?』

「い、いいや。私は直ぐに帰った。」

『嘘を言わないで下さい。教師が学校に訪れたのは平日の昼間ですよ?何処かのクラスで授業があったんですから、先生だって居ましたよね?学校に…。』

「…。」

いつもの朗らかな雰囲気とは違い、何か獲物を発見した時の獣の瞳を持つ、斬奈は次第にクラス全体の空気を段々と下げていった。ゆらゆらと揺れて立ち上がった斬奈は、自分の机に腰掛けるとパラパラと己の教科書を捲って先生をジトリと見つめた。見られた先生は蛇に睨まれた蛙の様に額から汗が滲み出て来ていた。

『“居た”と仮定して話を進めさせて頂きますね?教師が何故言いに来たのかは、先ほど私の口からも言いましたが1年の時にもう、この教科書全部やり終えているんです。一般クラスの人達も全員ね…。私達見晴し学園の生徒は特殊な職業に将来就きたい学生達が入る学校です。“3年間”と言う短い期間の間で、私達は多くの事を学んでいかないといけません。のんびりやっている時間は私達にはないんです。だからこそ、一般から入る生徒にとって見晴し学園の門は厳しいんですよ?先生。先生だって、見晴し学園を受験した身。それぐらいご理解出来るでしょ??』

「……!!」

『“どうしてそれを?”って顔をしていますね。当たり前じゃないですか。私、理事長の孫ですよ?知らない訳がないじゃないですか。自分が転校する学校の先生の事を…。結構中学生の時は優秀だったそうですね。あそこの中学偏差値率高いですし。』

「そ、それ以上言うと“退学”にするぞ!!!」

『アッハハ!すればいいじゃないですか先生!私をした瞬間先生。即教師免許剥奪と警察でその他諸々の事情聴取になりますよ??』

「な、何だと?!」

自分の誰も知らないはずの“過去”が斬奈の口からボロボロと出て行く為、先生は冷静さを失った。己の口から出た言葉が何を意味するのかと言う事に先生が気付くまで数分も掛からなかった。斬奈が言った言葉を理解した先生は顔が青褪め唇を噛み締めた。

『“その他諸々”と言う所は言うのはココでは止しときますよ。どうせ、テレビで放送される事ですしね。』

「…。」

斬奈が教科書で廊下を指すと、来神高校の先生数人に紛れ、見た事のない人達が居た為。その場に居た生徒達は、あそこに居るのは私服警官だと理解した。先生は青褪めたまま、他の職員に連れられて教室を出て行った。後に先生は生徒を脅し、女子生徒と淫らな行為にその身を置いていたと言う事が地元のテレビで放送されていた。

♂♀

「ねぇ、斬奈。」

『何?栗太郎。』

「何で、授業中に行ったの??」

『依頼人からの要望でね。まぁ、クラスは別だけど大勢の居る前で明かしてくれって事だったのよ。』

「斬奈って何者??」

『え?ナマモノだけど?』

「いや、そう言うのじゃ…。」

「あはは…。」



(当たり前です!)


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