夏の前に梅雨
キーンコーンカーンコーン
『終わった〜。』
斬奈のその一言と同時にチャイムが鳴り後ろの人が机の上に置いた用紙を回収して行った。
Act09≫Before the summer rainy season
簡単なHRを終わらせて教室から先生が出て行けばバラバラと生徒達も帰って行く。3教科の実力テストの為に学校に登校していたのでほとんど何も入っていない指定鞄を手に持ち、席を立ちいつものメンバーでゾロゾロと帰る。
「なぁ、皆はこれから用事ある?」
栗太郎の話しに下駄箱で靴を履き替えている各々は何も無い事を伝えた。ニコニコと笑っている栗太郎は笑顔で斬奈の肩に手を置くとこう言った。
「斬奈ん家行かせて。」
『えぇー…。ヤダ。』
「絶対そう言うと思った。」
『第一、何で行きたいの?』
「気になるからでしょ?」
「そうそう♪さすが、臨也。」
『…“向こう”の誰かから連絡来たの?』
「正解。因みに南からね。」
『でしょうね。私の家の内部を知っているのは限られた人物だけだし。それだけ?』
「うん。ただ気になるだけ。」
『…。』
振り返った斬奈は露骨なまでの表情で、嫌だと表現すれば、それでも栗太郎は引き下がる事を止めず。臨也も一緒に行きたいと言う。前々から臨也は行って見たいと言っていたが全く相手にされなかった。だがつい最近見晴し学園の生徒で女友達から家の凄さを聞き、興味が出た栗太郎が見事に参戦して、今に至った。小さく舌打ちした斬奈の後を着いて行き、それを見守る様な形で後ろから新羅、静雄、京平が着いて行く。元々コンビニに寄る事になっていたのでそこに向かっていた。
「ねぇ、斬奈。どうしてそんなに連れて行きたくないの?」
『いつの間にか溜まり場になっているのが嫌なのよ…。』
「中学時代ほんと凄かったよ〜ね。」
「ふ〜ん。それだけ?他は??」
「斬奈。1人暮らしか…。」
「親が許しているって事か、令嬢なのに。」
『まだ、あるけどそれは乙女の秘密って事で。』
「斬奈!?乙女だったの?!」
『栗太郎…。歯喰いしばろうか??』
3歩前に居た斬奈は後ろ向きに歩きながら、新羅の質問に答える(心底嫌そうな顔して)それを聞きながら、栗太郎は明後日の方向を見ながら、中学時代を思い出していた。静雄と京平は2人の会話を行っていて、同じ会話なのにちょっと空間が違っていた。聞いた本人の新羅は軽い受け答えでその他はないのかと言えば斬奈は片目を閉じ口に1本指を添えてそう言えば驚く栗太郎が居て斬奈の癪に障った様で、胸倉を掴まれ笑顔で顔の前に拳を持ってこられた。“ごめんなさい”を必死に連呼していると目的地のコンビニに着いた為、栗太郎は命拾いした。
***
コンビニの一部に懐かしの駄菓子コーナーが存在していて、そこに斬奈が張り付き、ガッサガサとカゴに駄菓子を入れて行く。全て買うの?と聞けば笑顔でうんと嬉しそうにそう答えた。なんやかんやでお店に立ち寄っていれば、時間は結構過ぎていてこれからどうするのかを話していた。
『まず、とりあえず。お昼済ませないとね。』
「その荷物持ってか?」
『あ…。』
「そうだよ、斬奈!ドタチンの言う通りだよ!!一旦家に帰って荷物置いてから行くのがいいよ!!」
『お家訪問の口実が普通になったな。でも一足遅かったな。荷物を取りにお迎えが後から到着するからな。』
「何だそれ…。」
ポツ
E「『え?』」
ポツポツポツ… ザアァァァァァァァァ…
「……。」
『と、とりあえず!雨宿りの出来る所へー!!!』
***
何とか雨宿りの出来る所に着いたが全員びしょ濡れで、このままでは風邪を引いてしまうと判断した斬奈は多少渋っていたが、仕方ないと言う事でお迎えの車をそこまで呼んで全員を自宅に呼ぶ事になった。
『不本意だが、緊急事態だし。しょうがないって事で。』
「まぁ、俺と臨也からしてみれば、どんな形であれ結果オーライって事なんだけどね。」
「一度場所が分かれば色々出来るし。」
「嫌だな、その含み…。」
『ホントだよね、京平。私、臨也だけには知られたくなかったのに…。』
「ご愁傷様って事じゃない?」
「必然だったんだよ。この雨は。」
『あんた達を家に迎える為の?って事??』
「「そうそう。」」
『はぁ…。』
迎えに来た車(リムジン)の中で延々斬奈は唸っていた。嬉しそうにしている栗太郎と臨也の他の京平と静雄は自分達が今乗っている高級車に萎縮しながら、2人で何かを話していた。新羅は車に乗せてある様々な本に興味を持ち、それを黙々と読みふけていた。斬奈の溜め息だけだ最後に聞えた。
(バケツ雨)
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