プール開き


『健闘を祈るよ。』

「…いいな。プール。」

「ホント何で男子はこの炎天下の中。グラウンドな訳?!」

『じゃあ!死なない程度にハッスルするがいい!!』

遠くから名前を呼ばれた斬奈は爽やかな笑顔を栗太郎達に向けてその場を離れた。玄関で別れた男5人は雲一つ無い青空の下に出て、軽く溜め息を吐いた。

「ムカつくんだけど。あれ、潰していい?」

「いいけど、逆に臨也が絞められるよ。」

「…。」

飛行機雲が青空のキャンバスに線を描いた時の出来事だった。

Act08≫Open Pool

『(ムフフ、楽しみ♪)』

更衣室から一番にプールへ出た斬奈はプール独特のにおいを嗅いでぶるっと体が奮えた。脳がにおいを嗅いでこの時期のプールの水温を脳が思い出して体にそれが伝わり、奮えと言う表現が現れた。早く水に入りたい衝動を抑えながら適当に準備運動を終えれば、先生の声が聞こえ女子はプールサイドに呼ばれた。

♂♀

(栗太郎視点)

「あつっ…!」

炎天下。とも言える6月中旬。まだ梅雨も来ていないのにもう池袋は夏の様な日差しと化していた。ジリジリとやけるような日差しの中で、3年男子はサッカーを行う事になっていたが、体育の担当教師が何かの用事の為、今日の体育の授業は自由な時間となった。しかし、日差しの中をはしゃぎ回る様な年齢でもない自分達は、プール側の壁に体をくっつけてちょうど木陰になったその場所で涼む事にして、5人は腰を下ろした。

「に、しても…。今年梅雨ってないんじゃないの?って思うぐらいに夏が早すぎる…。」

「ホントだよねー。このままだと、水分が抜けて干乾びそうだよ。」

「そのまま手前は干乾びて死んでろ。ノミ蟲が。」

「何言っているの?先に干乾びて死ぬのはシズちゃんの方でしょ?」

「あ゛ぁ゛!?何だと手前…。」

「何?ここで殺るの?上等じゃない…。」

「おいおい、お前ら…。」

「熱いだから、静かにしてくれない??」

『本当よね〜。こっちは君達みたいに、サボってないんだから。喧嘩するなら他でしてくれないかしら??』

木陰に入ってもジリジリ焼ける熱さは付いて来るいっぽうで、隣に座る静雄がイライラを募らせているのが真ん中に座っていた栗太郎には分かっていた。そんな彼を更に煽る声が聞こえた瞬間。静雄の怒りが頂点に達した様で、背中を寄り掛けていた壁が静雄の力に負けて割れた時。頭上から聞きなれた声が降って来た。数滴の水と一緒に。

「「…!?!」」

『もう!静雄と臨也のお陰で、皆が怖がって授業が出来ないんですけど!』

「「…。」」

「え?斬奈。」

『そうだけど?違う人に見える??』

「いや…、何て言うか。色っぽいねと思って。」

「あれ?新羅。珍しいね、斬奈。“首から上”存在してるのにトキメク何て。」

「ハハハ!本当にそれだよ。今、自分でも驚いてるよ。」

『“首から上”がない。とか、妖精とかじゃないんだから。褒められて居るのか微妙だよ。』

「!」

「新羅が言ってるだから、褒め言葉だよ。」

『まぁ、それなら。そう受け止めとくわ。とにかくここで争わないでよね!』

「「はーい。」」

金の髪から滴り落ちる水滴を飛ばして、斬奈はその場から忠告をして去って行った。斬奈が来た直後から一言も喋らない両隣に目をやれば、両隣は見た事もないくらいに顔を真っ赤にさせて少々前かがみになっていた。まぁ、思春期には少々刺激が強過ぎるその光景は見事に臨也と静雄の理性を震わせた様だ。これは触れたら危険だと思っていれば、2人を見ていた新羅を発見した。

「あ…。」

「あれ?臨也に静雄。前かがみでどうしたの?まさか、斬奈に欲情しちゃった??」

「「!!!!!!!?!!!」」

「ちょ、ちょっと!新羅、お前!何煽ってんだよ!!!」

「え?」

「おい、新羅…。手前、死ぬ準備出来た様だな…。」

「ちょっと、死んでくれない?新羅。」

「だ・か・ら!!!ここで争うなって言って…。」

バシャァァァ!!!

D「…。」

『だ・か・ら…授業が出来ないって言ってるでしょ??聞いてなかったの??』

臨戦態勢に入っていた臨也と静雄を鎮めたのは斬奈だったが、使った道具は全員をずぶ濡れにさせた。眉間に皺が入っている斬奈の持つ手の中にはホースが握られていて思いっきり水道水を掛けられた。まだまだ冷たい水を被った。ホースの水を止めてもらい。斬奈は気分がいい様で、嬉しそうに向こうへと帰る途中に気の抜けた声が聞こえた瞬間。何かがプールの中へと落下した。

「キャァァァァアアア!!!」

「大丈夫!?槇火紫さん!!!!??」

どうやら、滑って落ちた様だ。


(プールサイドは走らない)


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