夏は本当は好きじゃなかった。立っているだけでも流れ落ち続ける汗の不快感、それに日焼けをすると赤く腫れあがってしまうのだ。だから持田の夏には日焼け止めが欠かせない。屋外のプールや海に出かける機会があれば、肌に入念に日焼け止めを塗り込む。

持田が少しだけ夏を好きになったのは大好きな椿がその素肌を晒して真っ黒に日焼けしているのを見たからだ。まるで太陽の子どもみたいだった。夏の日射しの下、褐色になった肌を惜し気もせずに晒したその姿は持田のそれまでの概念を一変させた。

「仕方ないですよ。紫外線アレルギーかもしれませんし」

そう、椿は持田を慰めようとしたが、夏に受け入れられなかった大人と夏に愛された子どもの壁がやけに高いものに感じられた。

海辺で蟹を捕まえて笑う椿君の横顔が眩しかった。自分もその世界に飛び込めることができたのなら、この景色はもっと違って見えただろうか。


[*BACK]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -