あれから持田と椿はやってやってやりまくった。とにかくやりまくった。会う度にやった。会うのに理由などつけなかった。目的は性交のみだったから。持田のマンションの中でやった。モーテルの中でやった。時には草むらでもやった。とにかく性に塗れた日々を送っていた。

持田も椿も特別性に貪欲な気質ではなかったのだが、ただひたすらに何かに追われるようにただ性に満たされ続けた。この日々で得たものといえば、椿が後孔を使った性行為に慣れたこと、持田のプライベートを僅かだが垣間見られたことぐらいである。

ただ、椿の心境に若干の変化は生まれていた。

こうまでして自分を執拗に抱き続けるのは所謂セックスフレンドだからだけであるのか。
そして、持田のひた隠す心理に触れてみたい。

身体を重ねた末に情が移っただけなのかもしれない。それでも、もう椿にとって持田は「割り切ったお付き合い」のままでいられなくなっていたのだ。


「持田さん」
「何?シャワー浴びてくる?」

この日も持田と散々交歓を重ねた後だったが、とうとう椿は持田を問いただそうと決めた。

「持田さんはどうして俺とこんなことするんですか?」
「椿君は嫌いじゃないの?今まで結構楽しんでたみたいだったのに」
「そうじゃなくて。他にそんな相手もいないみたいだし、どうして俺を選んだのかって」

暫し黙りこくった後、持田は「……運命かな?」と自嘲混じりに呟いた。

「ピッチの上で見た君はきらきら輝いてて宝石みたいだった。君を俺のものにできたらこんな嬉しいことはないって思ったんだ。心までは届かないだろうからせめてその身体だけでも。身体が無理なら右脚だけでも。こんなぽんこつに成り果てかけてる俺に君の存在は眩しすぎた。俺にとって君は光だったんだ。そしたら、意外すぎるほど簡単に君の身体が手に入った。俺は射精するよりも何よりも興奮したよ」

持田が自分に固執している理由はわかったような気がする。それなら余計性交に拘ったのはなぜか。

「君の心を抱えられるほど俺の足はもうタフじゃないってこと」

……わからなかった。持田は決して人間的魅力に欠けた人間ではないだろうと思う。それなのに。

「じゃあ、俺に持田さんを抱えさせて下さいっていうのはだめですか」
「純粋だね、君は。だから俺には眩しすぎるんだよ。俺の視界は闇だ。闇しかなかった。そこに飛び込んできた一条の光が君だったんだけど」
「もう会えなくなるんですか、身体以上を欲してしまったら」

持田はなかなか返事をよこそうとはしなかった。そして、ようやく「……俺は重いから。椿君が幻滅して去っていくのを見たくないんだ。俺の我が儘」と答えた。

過去の持田に何があったのだろうか。それでも今は詮索よりも持田に言葉を投げかけるのが大事だった。

「俺、足腰には自信あるんス!重いなんて気にもしませんよ」

そんな椿を見て、持田は少し笑った。

「君って子は……。知らないよ、あとで嫌だって言っても追っかけてくるかもしれないよ?」
「俺が持田さんの光だって言うなら照らし続けたいんです」

やれやれ、と持田は首を振った。

「……もう一度、キスからやり直しませんか」
「ふふっ。俺、押しの強い子って結構好みだよ。知らないよ?もうどうなっても」

ベッドの中、持田と椿は再び絡みあいながら、口づけた。今度は感情を込めたキスだ。これからもそれは続いていくのだろう。二人を闇が邪魔するというのなら、それを振り払う光ももう彼らは手にしているのだから。


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