はじめて訪れた持田の家はその豪華さもあることながら、気にかかることがひとつあった。一匹のトカゲがケースの中で飼われていたのだ。そのトカゲの色は夕焼けから闇に変わる時の空の色のような不思議な色をしていた。

「あ、こいつ変わってるだろ?おもしろい色しててさ」

持田によると、このトカゲはペットショップを経営している知人から譲り受けたものらしい。種類は持田もよく把握しておらず、「南米原産のナントカトカゲだったような」とあやふやな答えを返していた。

「名前はつけたんですか?」

椿が尋ねると、持田は「ヤミ」とだけ答えた。確かにこのトカゲには相応しい名前だと思った。

「ヤミちゃん、ご挨拶は?」

持田がケースからトカゲを放してやると、トカゲは慣れた風に持田の袖に捕まった。それを見て、持田はご満悦そうに腕を椿に差し出す。爬虫類と間近で接したことはあるが、せいぜい田舎の小さなトカゲぐらいだ。このトカゲは20cmはありそうだ。少し緊張気味にトカゲに触れようとすると、トカゲは青紫の舌をちらちら覗かせた。

「ひ……!」
「そんなに怖がらなくてもいいのに。意外と大人しくてかわいいんだぜ」

持田はそう言って、トカゲの背をすうっと撫でた。椿もおそるおそる触れてみる。ひんやりとしていたが、肌触りは決して悪くなかった。

「こいつおもしろいの。たまに俺が食べてるグミ欲しがるの。さすがに食べさせるわけにはいかないけどさ。なんか哺乳類みたい」

グミを欲しがる、夕闇色のトカゲ。持田らしいペットだと椿は思った。

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夕闇色のトカゲ
2012/12/30

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