冬の寒さは人を余計に感傷的にさせるような気がする。夜ともなれば尚のことだ。俺は枕元に恋人の身体を手繰り寄せる。指先が触れて、確かにいるはずの彼の存在を確かめて、はじめて安堵の息をつく。

「……寒いんですか?」
「違う。こうしたかっただけ」

どうやら恋人はまだ眠りへと落ちてはいなかったようだ。俺は再び安堵の息をつく。

「ふふふっ。持田さんったらかわいいなあ」
「俺なんかより君の方がずっとかわいらしいじゃん」

五歳以上も下の恋人にそんなことを言われたのが気恥ずかしくて、誤魔化してみたら、「そういうところがかわいいなって」と抱き返された。

なんてこった。手のひらの上で転がしていたつもりがいつの間にか転がされていた。俺もまだまだだとは思いつつ、こういうのも悪い気はしない。たまにはリードされてもいいじゃん。若手を試す意味でもね、って俺、指導者気取りかよ。

気がついたら、椿君は俺の髪やおでこに軽いキスを寄越していた。ああ、こういう甘ったるい空気感、好きかもしれない。

それにしても不思議な子だ。俺の心の隙間に流れ星みたいに鮮やかに飛び込んできたかと思ったら、昔からそこにいたみたいに俺の隣にいるのが当たり前になってた。

「……キスしちゃだめですか?」
「だめって言ったらどうするの」
「我慢します」
「ほらあ、そこがチキンの椿君なんだって。もっと強気でこないと」

「じゃ、じゃあ」とおそるおそる近づけた椿君の唇が俺の唇に重なる。椿君らしい不器用なキス。

でも、それが彼らしくて、俺はグッときてしまう。酷く不器用だけれど優しい。無償の愛を受けるに値する人間なのか、と自問自答もしたけれど、今はこの穏やかな好意が心地良い。大人のキスならいつでも教えてやるけどね。

キスに夢中になっている椿君のジャージのジッパーをゆっくり下ろし、胸元をくすぐってやる。「もう、持田さんったら!」とか言ってても、声はちっとも怒ってない。寧ろ、喜んでる。

「そろそろ、俺のターン」

ジャージを思い切り脱がして、マウントを取る。それから、首筋を舌でなぞる。「あ」とか「や」とか椿君が身悶え始めた。一度、感じ始めるとすっかり意識がそっちに持っていかれちゃう椿君の姿がかわいらしい。

胸元もすっかり固く尖っていた。舌先で軽く遊ぶと、その度に爪先をむずむずさせる。

『行為』もお互い慣れたもので、タイミングを見て、どちらかが枕元に置いたワセリンを取り出す。今日は俺の番だった。指先で掬い、馴染ませたものを剥き出しにした椿君の下半身のそれにゆっくりゆっくり絡ませる。指先だけでももうだいぶ気持ちいいらしくて、椿君はすっかりだんまりで吐息を漏らすばかりだ。

「そろそろ、いい?」
「……もう少しだけ」

そう言って、ぼんやり俺に視線を投げる椿君の表情は惚けていた。トロ顔ってやつだ。こんな椿君のやらしい顔を覗き見できるのが俺だけかと思うと、ますます下半身に熱が集まるんじゃないかって気分になる。

リクエスト通り、もう少しだけ窄まりを解してやってから、ゆっくりと俺のものを差し挿れる。慣れたといっても、少しでも痛まないように、上を向いた椿君のものや朱に染まった尖りをくすぐりながら、じわりじわりと入り込む。

少しばかり長い時間をかけて到った椿君の中は狭くて温かくて気を許すと、すぐにでも達しそうになる。

「動かすから」

返事は返ってこなかった。代わりにこくんこくんと何度か首を振っていた。

なるべく乱雑にならないようにゆっくりと腰を動かし出すと、椿君は堰を切ったように『あ』行の嬌声を投げ始めた。完全に無防備な姿を晒けだしてくれることが嬉しくてたまらない。

声が大きくなると、椿君は恥ずかしさを誤魔化すみたいに俺の背に爪を立ててしがみついてこようとする。中もぎゅうっと締まりつけてきて、意識が何度かトビかける。

「や!……持田さんっ、もう無理ッス!」

言うが早いか、椿君のものが先端からびゅっと白濁を溢した。その勢いで、椿君の奥もきついぐらい締まって、俺も耐えきれずにそのまま達した。隔てるものもない粘膜と粘膜との接触はただの行為以上の快感をもたらす、と俺は思う。愛する人の内側から触れられるという、この上ない充足感。

「シャワー行く?」

少し回復が早かった俺は椿君に声をかけてみた。が、椿君は「今日このまま一緒に眠りたいです」と枯れた声で呟いた。

ああ、確かに。シーツなんかクリーニングに出せばいい。こうやって裸で抱き合って、朝を迎えるのも悪くはないね。

「おやすみ」
「おやすみなさい」

慈しみのキスを軽く交わして、俺は椿君の汗ばんだ身体を再び手繰り寄せた。


[*BACK]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -