上等の布団に包まれた椿は夢と現を行ったり来たりしていた。布団が上等だと睡眠の質も付随して良くなるような気がする。そろそろ本格的に眠りの国に招き寄せられる……、と意識を手放そうとした瞬間、背後に気配を感じた。

「椿君、寒い。暖めさせて」

この布団とベッドの持ち主の声だ。そもそも、この部屋はエアコンが温風を隅々まで行き渡らせていたはずだが……。

「持田さん……?俺、眠いです。エアコンも効いてますし……」
「明日からオフなんでしょ。言い訳なんてズルい。俺は椿君で暖まりたい!」

最後のひと言に思わず跳ね起きた。照れもなく堂々と言ってのける持田に対して言われる側の立場としては嬉しさと恥ずかしさが半々といったところだ。

呆気にとられている椿の頬に近づいてきた持田の頬が擦りつく。

「んー。すべすべしてて暖かい。相変わらず気持ちいいな」

椿は完全に覚醒してしまった。これでもたまには持田を突き放そうかとも思うことがあるのだが、椿の身体に猫みたいに擦り寄って、顔をほころばせている姿を見ていると、きついことを言う方が野暮に思えてしまう。

「持田さんがかわいらしい態度とるからいけないんです」

椿は自分に向けて言い放ったつもりだったが、渦中の人物は「えっ!椿君たら俺のことをかわいいって思ってんの?他の奴なら鼻ピンでもするところだけど……。椿君にそんなこと言われたら俺気恥ずかしいじゃん」と余計にボディタッチに励み出してしまった。

「あのさ……。椿君があんまり言うからさ、俺したくなってきちゃったんですけど」

そういうことをしたくなるようなことを発言しただろうか……?椿は真面目に悩んだが、結論は導きだせない。

「眉間に皺寄せてどうしたの?」

いつの間にか、持田の顔は鼻の先だ。近いなと思った矢先、喰らいつかれた。本当に猫の甘噛みみたいだ。唇をやんわり食んで、ちろちろと舌先を絡ませる。こんなやわらかいくちづけを寄越されたら、いくら椿が鈍いとはいっても、それなりにやましい気持ちにはなる。椿だって健康な若い男だ。そうしたくなる時だってあるのだ。

何度か唇を啄むと持田は椿の上着を脱がしにかかった。ジャージを寝間着にしているのは専らやましい意味でありがたい。ジッパーを臍下まで下ろすと椿の素肌が露になる。

「跡つけちゃいたい」

そう言った持田だったが、実際には首筋を何度か舌で上下して、胸元に吸いついただけだった。持田は独占欲の強さを自称してはいるが、意外にもTPOは弁えているので、あとから椿の迷惑になりかねないことをすることはない。

胸元に吸いつかれた椿はおもむろに息を荒げ始めた。軽く舌で転がされただけで尖りは硬度と共に感度も高めてしまう。声を発するのが恥ずかしくて、口に力を込めていたら、いつの間にか目尻から涙が滲んでいた。

「我慢しなくていいのに。そういう仕草もぐっとクるけどさ」

と、言いつつも持田の右手は椿の股ぐらにあった。芯を持ち始めたものをやわやわと揉み扱きだす。

「そんなことされたら、声、出るじゃないですか……。んんっ」

手淫を続けたまま、持田がふと椿の顔を見やると、表情筋はすっかり弛緩した上に頬は紅く染まり、 はあはあと小さく口で呼吸を続けていた。

この表情を見られるのは俺だけだ、と思うと、支配欲が掻き立てられる。

「……やです。俺だけこんなのっ、持田さんもっ!」

今まで防戦一方だった椿がよろよろと上半身を持田に近づける。椿は手淫されたまま、持田のスウェットパンツに手をかけ、顔を覗かせたものを咥えこんだ。既に膨らんだそれにゆっくりと愛撫を加えると、途端、芯に熱が灯る。

「まさか、そうくるとはね……」

持田の表情からも余裕が消えた。今はお互いどこまで快感に耐えうるかの根気比べのようなものだ。

「んっんっんっ!」

イキそうだ。だが、声に出せない。持田はそれとなく察したらしく、右手により力を込める。椿も口元の動きに細心の注意を払った。

五分も経たないうちに椿は臨界点に達した。声を発せない代わりに感極まった涙がぼろぼろ溢れた。涙と涎で顔をぐちゃぐちゃにしながらも椿は持田への口淫を続け、持田は椿より少し遅れながらも達した。

「き、きもち…よかったです……」
「え。椿君飲んじゃったの!?」

持田が達した後、椿は口から何か吐き出したりした素振りは見せなかった。つまり、そういうことだ。

恥ずかしげに小さく頷いた椿の姿を見て、持田の心の内にいとおしさが一気に溢れ出した。もう、どうしようもなく、この少年の面影の残る青年に夢中になってしまっていることを痛感させられる。

「椿君さ、ちょっと休んだら、続きしない?まだ椿君に触りたい触りまくりたい」
「……!」

椿は再び顔を紅く染め、小さく頷いた。椿にしてみれば、これが精一杯の返事なのだが、今の持田にとっては是否以外はどうでもよかった。


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