さっぱりしたら、久しぶりに洋服でも見に行ってみようかなと思っていたのに、あの怖い笑顔の王様が俺を待っている。しかも「好きだ」なんて。
怖すぎる。笑顔やプレイだけじゃない。持田さんが何を考えてるのかわからないのは、俺がひよっ子だからってだけじゃないと信じたい。


「椿君、シャワーにえらい時間かかったね。ちゃんと色々洗ってきた?目上を待たせるなんてさすがETUが誇る大物だね」

駐車場に立っていた持田はそう言って、また椿の言うところの「怖い笑顔」を浮かべた。

「ところで、攫うって俺をどうしたいんですか」

恐る恐る椿が尋ねると、持田にしては屈託のない笑顔で「動物園に行こう」と答えた。予想外の発言や表情にますます椿は困惑する。

(動物園って完全にデートじゃないっすか……。それも男二人で。相手はリーグジャパンのトッププレイヤーなわけで)

「ここからなら上野動物園が近いかな」

子供にしてやるみたいに持田は椿に向かって、「おいでおいで」をした。その先には漆黒に染まった一台の車。当然のように左ハンドルだったが、派手さはなく、シンプルなデザインだ。王子とは対照的だなあと思った。

「いい車ですね」
「君は車持ってないの?」
「いえ、ペーパードライバーってやつです」
「じゃあさ、俺、椿君のお抱え運転手になろうか。高くつくけどね」

そんなことをぽつぽつ話しながら、車は上野を目指す。意外にも持田は丁寧な運転を心がけているのか、車内に控えめに流される音楽とも相まって、すっかり心地好い気分だ。

(持田さんのこと、もっと知ってみるのもいいかもしれないな)


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