※持田Vユース上がり設定。
 持田DT設定。



持田はよく派手な女性関係を噂される。が、実際には合コンの人数集めだとかそういったことに嫌々付き合っていただけの話だった。
勿論、そんな持田の事情など知らぬ女の子たちがアタックを繰り返すことも多々あった。そんな彼女らに辟易していた持田は思いつく限りの暴言を投げつけることで、その場から逃避することを覚えた。

「ごめん、俺、ブスに興味ないし」

その場で号泣した子、跡が残るほどのビンタを食らわせた子は数知れなかったが、持田に罪悪感というものは存在していなかった。

(……あの人、あの人だけが俺を見てくれればいいんだ)

持田の身体は穢れを知らずにいた。それもたった一人、十代の頃からその背中を追ってきた、あの人にいつの日か捧げることができるなら……という淡くほのかな願いの表れだった。

横柄な態度や物言いのせいで、チームメイトの殆どは気づくことはなかったが、持田という男はひどく純粋な心を秘めた人間だった。ただ、それがある一人の人物にだけ向けられている、というだけで。

「持田、調子はどうだ?」

その人物は持田の心情など察するはずもなく、シャワールームから出てきたばかりの持田に明るく声をかけてきた。

「……まあ、ボチボチですかね。シロさんもこれからシャワー浴びるの?」
「ああ。暑くてたまらんからな」

できるなら、もう少しだけ距離を縮めて、彼の匂いを嗅ぎたかった。まっさらな肌よりも身体中から発せられる彼自身の匂い。……想像するだけで、持田は動悸が速まるのを感じた。

(触れてみたい)

わざとよろけたふりをして、城西の胸に倒れこんだ。

「おい、持田!大丈夫か?」
「んー、ちょっと立ち眩みしただけ」
「……シャワー浴びたばかりだろう?すまないな、また汚してしまって」
「シロさんは汚かないよ。平気平気」

ひらひらと手を振ると、持田は城西から背を向け、廊下をとぼとぼと歩いていった。

(……すっげえ熱かった、あの人の身体。それにあのむせかえるような匂い)

あれ以上、顔を付き合わせていたら、きっと頬が赤く染まるのを見られただろう。鈍感な城西がそれに気づくとは思えなかったが、「ついでだから、洗ってやろう」なんて言い出しかねない。城西はそういう性格だ。

男子トイレを視界に入れた持田は直ぐ様駆け込んで、個室に籠った。

(……あの感覚を覚えてるうちに。早く。シロさんに触れたこの手で、早く)

ハーフパンツごと下着をずり下ろし、既に頭をもたげていた性器を握りしめ、激しく上下させた。

(シロさん、シロさん、シロさん、……シロさんっ!)

さほど、時間をかけずに持田の欲は白濁となって、掌の中に収まった。虚脱感でいっぱいになった持田は掌の中の体液もそのままに、トイレの壁にもたれ、ずるりとへたりこんだ。

(……こんなズリネタにしてるって知ったら、さすがのあんたもひくかな。そりゃそうだよな)

「……気持ち悪ぃ」

ふと、口をついて出た言葉は己を卑下するものだった。何年も何年もあの人のことだけを想ってきた。表向きはどんなに口汚い言葉を投げようとも、勝利に固執するのは自分やチームの為以上にあの人に捧げたかったからだ。

(……重てえな。こんな感情、俺が抱えてるだけで充分だ。誰かと共有するようなもんじゃない)

暫らく、定まらない視線を浮かせたまま、持田は時間が過ぎるのを待っていたが、掌にこびりついた体液が乾いてきたことに気づくと、ようやく個室から抜け出し、洗面台で執拗に右手を洗い続けた。……まるで、自分の抱えている感情ごと拭い去りたいかのように。


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