目に滲みる煙で城西はゆるやかに惰眠から現実へと引き戻された。思わず、隣で眠りこけていたはずの持田の姿を探す。彼はベッドの角隅に腰を下ろし、煙草を吹かしていた。

「持田、煙草は良くないとあれほど……」
「こういう時にしか吸わないし」

けだるそうな仕草で持田は灰皿に煙草を押しつけ、また、カチリとライターを鳴らすと、新しい煙草に火を点けた。薄明かりの寝所が一瞬だけ明るさを増して、すぐさま元の静けさへと戻る。

「シロさんは優等生だからわかんないんだ。たまには身体に悪いことでもしなきゃくたびれちゃう」
「俺じゃ不満なのか……?」

真剣そのものの城西の表情をちらと見てから、持田は煙草片手に両手両足をばたばたさせて爆笑した。

「ほらあ、また、そんな考え起こしてさ。俺とシロさんは繋がることはできるけど、相容れることはできないね」

城西は持田の言うことがよく判らないと言った風に小首を傾げる。

「ま、シロさんのそういうとこ、嫌いじゃないけどさ」

ぷはっと持田の口から紫煙が立ちのぼる。小さな輪っかは広がって次第に掻き消された。

「また、しよっか」

城西の返事も待たずに持田はするりとベッドの傍らに忍び込む。

「持田、寝煙草は……」
「はいはい。わかってますって」

まだ火の残った煙草を持田が灰皿に押しつける。強引に消された煙草がジュッと音をたてた。そして、持田より少しばかり広い城西の背に肌を密着させる。腰の辺りに持田の膨らんだ欲を感じて、城西は持田の方へと寝返りを打つと、首筋から胸元をそっと撫でた。その均整のとれた身体は視界に入れずとも、触れるだけで判る。城西の薄い唇が持田の厚ぼったい唇を食むとヤニ臭い味が口内に広がった。普段なら不快なそれが今の城西には不思議と心地好いものに感じられた。持田の色に染められていっていることに驚きつつも、城西は夢中で持田の唇を貪った。彼はたちの悪い毒薬のようだ。知らず知らずの間に身体に滲みていき、緩やかに意識を麻痺させていく。

「なあ、持田」
「……ん。シロさん、今度は何?」
「あとで一本分けてくれないか」
「シロさんが俺を最高にイカせてくれたら、ね」


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