「今日で4ヶ月と16日と多分3時間ぐらい」

持田さんがふいに呟いた言葉。鈍い鈍いと言われ続けている俺には当然その意味など判るわけがなかった。何のことですか?、と尋ねると持田さんは再び呟いた。

「俺が椿君を好きになってから経った日数」
「持田さん、そういうのって気にする方なんですか?意外ですね」
「出逢いがドラマチックだと自然と覚えちゃうもんなんだよ」

そうだ。あのプレシーズンマッチから、そんなに経っていたのか。あれから目まぐるしく色々な出来事が起こっていったから、まだ、ここ数日の感覚だ。

「よし、決めた。今日は記念日にする。俺と椿君だけの記念日」

そう言って、持田さんは笑った。例の強烈な笑顔じゃなくて、穏やかな微笑みだった。

「記念日にするには中途半端じゃないすか?」
「いいの。俺が決めたんだから。なんなら、毎日、記念日にしてもいい」

それじゃあ、記念日の意味がないですよ、と言いかけたが、やめにした。だって、毎日を記念日にしたいぐらい、俺のことが……、ってことなんだから。

「ここはぜひ記念品の贈呈をお願いしたいね」
「えっと、持田さん、何が欲しいんですか?」
「椿君」

何の衒いもなく、持田さんは即答した。我ながら愛されてるな、と思ってしまった。
気恥ずかしいけれど、持田さんの肩を引き寄せる。間近で視線が絡むと、身体の芯がほのかに熱くなった。持田さんの唇は少し厚くて柔らかい。ちゅうっと唇と唇とが重なる音がしたら、そこから俺の意識はふわふわと踊りだす。彼もこんな感覚を味わっていたらいい。一人で踊るのは寂しいから。酸素を求めて、一瞬、唇を離した時、鼻がぶつかった。持田さんはふふっと口角を上げて、俺の髪を撫でる。

「じゃあ、『椿のキスが上手くなった記念』にしよう。次は『100回キスした記念』にでもするか。だはは」

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10月7日はモチバキ記念日!


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