※いろいろ捏造しています。
 持田ユース上がり設定。
 持田と城西の年齢差が5〜7ぐらいだったらいいな願望。


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ふと、あいつと出逢った頃を思い出した。キャプテンマークを巻く機会も増え始めた翌年、ユースから一人凄い奴がトップ昇格してくるのだと聞いた。すぐにでもトップで通用する程のテクニカルなプレイヤーだと。
キャンプのミーティングで挨拶をしたあいつはまだあどけなさを残した少年だった。

「持田です。U-18から上がって来ました。早くトップチームにも馴染んでいけるように頑張りたいと思います。宜しくお願いします」

トップの面々を前に緊張しているのか、ぎこちない仕種。肌はサッカープレイヤーにしてはやけに白い。頬にはうっすらとにきびの跡が残っている。パッと見はどこにでもいるような、ごく普通の少年だった。
だが、あいつがただ者ではないということはキャンプインしてすぐにわかった。トップメンバーの誰よりも引けを取らない確かな技術。こいつは間違いなく将来のヴィクトリーの中心になる。そう確信した。



「し、城西キャプテン!」

初めてあいつから声をかけてきた時のことは今だによく覚えている。

「持田、そうかしこまるな。シロでいい」
「ウス。シロさん」
「トップはどうだ?」
「だいぶ慣れました。でも、まだまだ緊張しますね」

ルーキーは少しはにかみながら笑った。

「そんなこと言ってるが、おまえ、すぐにリーグ戦で使われると思うぞ」
「そうすかね。だけど、一日でも早くトップの試合に出たいです」
「もし、何か困ったことがあったらすぐに俺に言えよ。相談ならいくらでも乗ってやるから」
「ありがとうございます。シロさん」

それ以来、懐かれたのか、シロさんシロさんと俺の後ろをついて回るようになった。弟ができたような、そんな感覚だった。



シーズン開幕してすぐ、ルーキーにとっての夢の舞台は訪れた。途中出場だが、1アシスト1ゴール。華々しいデビューだった。試合終了後、あいつは真っ先に俺に向かって飛び込んできた。

「シロさん、俺やりました!やりましたよ!」
「上出来ってもんじゃないぞ。中々、こんなデビューは飾れないな」

持田のくせっ毛を軽く撫でてやると、興奮で紅潮した頬がますます赤く染まる。可愛らしい弟の活躍を俺も自分事のように喜んだ。だが、それは今にして思えば、偽物の兄弟としての関係が終わりを迎える序曲であったのかもしれない。



それから、暫くして。
普段、メールなど寄越さないはずの持田から届いた一通のメール。
『シロさんに会いたい』
ただ事ではないな、と思い、持田の実家近くの公園まで車を飛ばした。

「……シロさん」

夕闇が降りてきた公園に一人佇む少年の表情は複雑な色をしていた。

「何かあったのか」

持田は首を大きく振って、俺にしがみついてきた。

「違うんです。俺、シロさんが来てくれなかったら諦めようかと思ってました。……でも、こうやって来てくれた」

そう呟いた持田の声は涙声だった。

「……好きなんです。シロさんのことが。こんな感情おかしいってわかってますけど、それでも好きなんです」
「持田、おまえ……」

こちらを見上げる少年の顔は真剣そのものだ。俺はあの時、過ちを犯したのかもしれない。だが、この腕は抱き寄せることを選び、唇は持田を望んだ。
――こうして、偽物の兄弟としての関係は終わり、新しい関係が始まった。過ぎたことを思い返しても、それは懐古以外の何物でもない。しかし、あの時、俺が別の選択をしていれば、今とは違う未来があったのだろうか。それは神のみぞ知ることだ。



「……どうして、こんなにやさぐれちまったんだか」

城西がぼやく横で、持田が不服そうに口を尖らせる。

「あー、あの時は俺シロさんに嫌われたくなくて必死だったんですよ。今だって俺シロさんにはすげえ素直ですもん」
「まあ、ある意味では素直だな……」

あまり納得しかねている城西の様子を見て、シロさんつれないなあ、と持田が抱きつく。

「俺は今でもピュアな少年のままのつもりですけどね、って自分で言って恥ずかしくなってきた。だはは」
「確かにおまえは純粋だよ。少なくともサッカーに関しては」

また、不服そうに持田が口を尖らせた。今度はそのまま、その唇を城西に重ねる。

「シロさんにも純粋ですよ、って本当に言わせないで下さいよ。さっきから腹が攣りそう」
「じゃあ、そういうことにしといてやるよ」

城西はやんちゃ坊主になった大きな弟のくせっ毛を撫でた。その感触は今でもあの頃と変わらない、そんな気がした。


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持田絵チャで『持田のルーキー時代』についての話題になる→圧倒的に「ザッキーみたいな感じでしょ」な意見→「でも、初々しい持田もかわいくない?」→わたしの心の中のシロさんがアップを始めた!
そんなノリで作ったお話しです。小生意気ルーキー持田も初々しいルーキー持田もどっちもおいしいです(心の中のシロさんの気持ちを代弁)。


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