「持田君の田舎へ泊まろう!〜帰郷編」

テ〇東ネタその2。持田がストライクフリーダム。


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のんびりと各駅停車の電車が揺れる。景色は晴れ渡る青に深緑。絶好のピクニック日和といった天気。

「だはー!本当におにぎり握ってきてくれたんだ!もちろん、手巻きだよね?」

赤黒の手ぬぐいの中のおにぎりを手にして、はしゃぐ持田に椿は少し照れながら小さく「……ウス」と答えた。

「愛情おにぎりだ!たまんねえ」
「海苔がついてるのがタラコで、胡麻塩が梅干しです……って」

持田は椿の説明を聞く前におにぎりを遠足に行った小学生みたいにパクついていた。無邪気な様子に椿もほっとする。

(しかし、本当に来ちゃうとは……)

椿もこの状況を楽しんではいるが、先立つ不安が過ぎるのもまた事実だ。両親には「お世話になっている人を連れてきます」と連絡は入れたが。

「……ご家族になんて言おう。お宅の息子さんを僕に下さい!とかでいいのかね。だははは」

不安は的中したようだ。そして、恐らく現実のものになるだろう。実家のリビングが凍りつく様を想像するだけで頭が痛い。

「あの、結婚するわけじゃないんですから」
「えー。椿君、恋愛と結婚は別で考えるタイプなんだ。意外といまどきの考え方すんだね」
「や、そういう意味じゃなくてですね!」

茶化す持田に対して、椿は真剣そのものだ。両親に紹介して、実家に泊めるというだけでも緊張するというのに。

「椿って本当に俺のこと好きなの?なんか俺ばっか先走ってね?」
「すすす、好きですよ!」
「じゃあさ、これ取って」

持田が指差したのは口元についたごはん粒。椿が手を伸ばすと持田がそれを遮る。

「ちゃんと口で」

思わず、椿は周囲を見回した。疎らだが、学生や老夫婦の姿がちらほらとある。

(ううっ、もうどうにでもなれ!)

椿は向かい合った持田に身体を寄せ、彼の口元をそっと舐めた。周囲の視線が突き刺さるのを感じたが、椿の思考は既に停止していた。

「チューもしてよ」

機嫌がいいのか、持田の要求がますますエスカレートしていく。これはただの帰省じゃ済まされないな、と椿は諦めながらも、持田に軽いキスをした。


鈍行電車は揺れる。バカップル二人と凍りついた一般客を乗せて。


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田舎の電車の座席は大体対面式です。


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