「ヒラさん」

持田は平泉との情事の時には必ずこう呼ぶ。平泉は持田との行為に溺れつつも、監督と選手、越えてはならぬ境界を踏み出してしまったことに些か後悔の念を覚えつつも、この若い肉体に溺れることをやめられないでいた。

彼は魔性だ。
ピッチの上の王はこんなにも淫らに私に向かって、足を開いて見せるのだ。

「平泉さんったら」

持田は平泉の肩に柔らかく歯をたてた。猫の甘噛みのようだな、と平泉は思った。

「さすがに第二ラウンドは無理?でも、ヒラさんならまだまだいけるでしょ」

有無を言わさず、持田は平泉の下腹部に手を添えた。欲は簡単に隆起する。

「ほら、ね?今度は俺が上になりますから」

それから、持田は私をベッドへ引き倒すと、まだ熱を持った窄まりの中へ私の欲望を導いた。中は熱く、先程漏らした体液で潤い、きつく締めつけられる。
持田はそんな私の顔をしかと見つめながら、自ら積極的に腰を動かしていた。

「あ……、ひ、ヒラさんの、すっげえいい!あ!やあっ!」

真上からは、あ行だらけのあからさまな喘ぎ声が降り注ぐ。私はこうして、持田に欲を吸い取られる、その時を待つだけだ。
――そうだ。彼は、持田は淫魔だ。精を吸って生きるという魔物だ。


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