※ギャルソン椿と客持田
カフェで思いついたネタ


****

椿大介は震えていた。今日はバイト初出勤、当日。
接客業になんとなく興味があってのことだったが、カフェのバイトなのだ。
面接した店長は35歳には見えない若作りのお洒落な人だったが、「おまえのキャラがおもしろいから」という理由で一発採用になってしまった。あの日も緊張でがくがく震えていたのに。

「ううっ、やっぱ似合ってない……」

少しダボついたギャルソン服に身を包んだ椿は、鏡の中の自分に向かって溜息をつく。

「椿、今日が初日だろ?シャキッとしろ」

村越さんとか言ったか、この店のホールチーフが椿の肩を叩く。

「とりあえず、あのお客さんからオーダー聞いてきて」

村越さんが指さす先には短髪の椿よりは年上に見える、若い男。頑張らなきゃ、と自らに言い聞かせながら、テラス席に一人佇む男に向かう。……が、右足と右手が同時に動く。極度に緊張しているせいだ。

「お、おっ、お客さまっ!ごごご注文はお決まりでしょうかっ!」

上擦った声をあげてしまった椿をちらりと見て、男はぷっと吹き出した。

「かわいいね。君、新人?」
「ウス、……じゃなかった、はい」

男は少しの間考え込んだ後、こう答えた。

「スマイルで」

なんだそりゃ、ここはマクドナルドじゃないぞと思いつつも、椿は男に笑いかけてみた。口角は引き攣っていたが。

「うわ、まじでやってくれたんだ。ウケる」

最初から厄介な客に当たってしまった。早くこの場を去ってしまいたい。椿は逃げ出したい気持ちでいっぱいで泣きそうになった。

「あの、ご注文はまだお決まりでは……」
「今、決めた」
「何にいたしましょうか?」
「君」


****

あとで携帯番号かメアドを書いた紙を無理矢理押し付けられます>椿


[*BACK]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -