「つーばーきーくんっ」

やけに弾んだ持田の声。最近の持田は椿と二人きりだと、ピッチ上の威風堂々とした王の威厳はどこへやら。我が儘放題の暴君と化していた。

「二人っきりなのに全然構ってくれないじゃん」
「充分構ってますよ!」

そう言い切った椿は恥ずかしげに俯く。

「何かと言えば、達海さんだの村越さんだの赤崎だのなんだの……」
「チームメイトなんですから仕方ないでしょう」
「つまんねえ」

窘める椿を尻目に持田は口先を尖らせて拗ねる。まるで子供だ。

「じゃあ、持田さんも城西さんたちの話、しないで下さい」
「やだ。それとこれとは別じゃん」

どうしてこんなふうになってしまったんだろう。少し持田さんを甘やかしすぎたかもしれないな、と普段はチキンな椿もさすがに一言言ってやりたい気分になる。

「だって、シロさんは先輩で俺のチームのキャプテンだもん。それにシロさんは別に俺のことなんか狙ってない」
「……もしかして、ETUのみんなが俺のことをどうかすると思ってるんですか?」
「もちろん」

当然だとばかりに持田は例のぎらぎらとした表情を浮かべる。

「そんなわけないでしょ」
「いいや。大体、椿君は無防備すぎ。ガードが甘いの。なんつったっけ?ジーノだ。あいつ、君のことを犬なんて言いやがるし」
「王子なら男同士で相部屋になるのも嫌がるぐらいですよ」
「椿は特例かもしれねえじゃん」

もう、仕方ないな。椿は今こそ自分の中のジャイアントキリングを起こすしかない、と決意した。

「もし、仮に監督でも王子でもパッカくんでも俺のことを気にかけてようが、俺はあなたのことしか見えてませんから!持田さん!」

腹を括った椿の決死の大告白だったが、だはは!と爆笑する持田の笑い声に後半は掻き消されてしまった。

「俺のこと、ぴったりマークしてくれんだ?」
「ウス」
「若さとスピードだけじゃついてこれないよ?」
「死ぬ気で喰らいつけ、でしょう?」

再び、持田はだははと腹を抱える。

「いやー、よく言い切ったね。ビビりの椿君。そんな大それたこと、君が言えるなんて思わなかった」
「茶化さないで下さい。俺、結構真剣なんですから」

あまりに持田が笑いとばすので、温厚な椿もいい加減カチンときた。せっかくぶつけた想いの丈を無下にされてしまったような気がしてしまったのだ。下を向いた椿を見て、さすがにまずいと思ったのか、暴君も次の手を打つ。

「……椿がそんなにマジだと思わなかったんだよ。マジになってるのは俺だけだって思ってたからさ」
「本当にそう思ってるんですか」

椿の目がいつになく冷ややかだ。暴君は一気に窮地に陥った。

「思ってるって!……だからさ、」

そして、持田は有無を言わさぬうちに椿の顔を引き寄せた。唇と唇が重なる。椿の唇は荒れ気味だったが、その感触すら持田には心地好い。

「椿が飽きるまででいいからさ。甘えさせて……っつたら笑う?」


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