「素晴らしい光景だねえ」

すっと背筋を伸ばした持田は満足げに笑い、足元の黒髪をそっと撫でた。
足元の黒髪――、椿はジーンズの間から覗いた持田そのものを咥えこみながら、上目遣いで彼の目を見る。

「ホント、動物みたい」

頬を僅かに上気させ、持田は自らを落ち着かせるように額にうっすら滲んだ汗を拭う。椿は目を合わせたきり、ただ目の前のそれに一心不乱に喰らいつく。解き放たれた獣の如く。

「舌もちゃんと使って」

持田は大きく息を吐くと、ぐいと椿の後頭部を掴み、下腹部に押し込めるように、自身を深く深く飲み込ませた。

「……!」

喉の奥まで入り込んできた持田に椿は思わず嚥下しそうになるも、必死で堪え、慣れない口淫にひたすら集中した。指一本、性的な触れ合いなどないのに、この興奮はどこからやってくるのだろう。もっともっと彼を好くしたい。彼の眼光に射抜かれたい。

「あー、もうイッちまうよ。いい?」

同意を確認するまでもなく、持田は掴んだ椿の頭を打ちつけるように前後に振る。そして、椿の咥内で一瞬硬直を極めたそれはどくりと脈打ち、椿の中へと目掛け、大量の欲望を吐き出した。

「……飲んでみせてよ」

含んだ白濁で少し口を膨らませた椿はこくりと頷くと、喉を小刻みに鳴らした。

「どんな味?」
「……苦いっす」
「そっか」

それから、持田は腰を屈め、椿の唇を舐め、舌で嫌というほど掻き回した。

「……確かにひでえ味」

唇を離した持田が自嘲を込めて笑う。ぼんやりと視線を漂わせた椿に長く伸ばした指を咥えさせながら。

「他人から言われるのはくすぐったい気分なんだけど、」

へたり込んだままの椿の下腹部の膨らみを右足で弄ぶ。

「今は俺が王様なんだぜ、君の。わかるよね?」

椿は言葉で答える代わりに、持田の指を丹念に愛撫した。はじめて言葉を交わした時から、身体を預けるようになった今でも、椿にとっての征服者は彼一人だけだ。だから、椿は何も口にすることなく、行動で服従を示す。

「……いい子だ」

持田は椿の口元からするりと指を抜いた。顎を軽く引き、立ち上がるよう促す。

「持田さん、俺……」
「わかってるさ。もっと楽しませなよ」

ふらつきつつ、吸い寄せられるように椿は持田の胸の中に倒れ込む。その耳元で持田は囁いた。

「おまえは俺のものだから」


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