ガキの頃から「持田君は怖い」と言われてきた。クラスの輪の中でわいわいやってたら、俺は満面の笑みを浮かべたつもりだったのだが、「持田君がいじめる」だの言われて、泣かれたこともある。寧ろ、それ逆に俺のこといじめてるんじゃないのか。今だから笑い話で済むが、全く酷い話だ。



話を本題に戻そう。最近、好きな相手ができてしまった。よりによって、うちのダービー相手の弱小チームの若手だ。要は野郎だ。
昔から女たちは一方的に俺のところに押しかけてきてばかりいたが、本人たちのイメージの中の俺しか見やしないし、何より一緒にいても退屈だった。飯がどうのとか、「今日の服、かわいいかな?」とか。知るか。そんな風にして、女が押しかける→俺がすぐに飽きる→女が逆ギレする、をローテーション気味に繰り返していたら、「持田はチャラい」と言われた。知るか。
女は面倒臭いし、今はスタジアムの歓声の中に再び立てることの方が大事だったから、そういうことは当分ないと思っていたのだが。



椿はいいプレイをする。ベンチからピッチを駆け上がる椿の姿を眺めていたら、背筋がぞくりと震えた。なのに、あいつは俺に気づくと急に縮こまって、所在なさげに目を泳がせてしまう。自信があるのか、ないのか、さっぱりわからない。プロとしては致命的な部分ではあるが、プレイの精度は悪くないし、何よりキャラがいい。なんで、あそこまで俺にビビるのか考え始めたら、いつの間にか、椿のことばかりが頭ン中を占めていたことに気づいた。

「やべ、俺って恋しちゃってたんだな。ウケる」

口にしたら、ますます笑いがツボった。と、同時にこんなに心を捉えて離さない、あの朴訥とした青年のことが一層気になって仕方なくなった。

(あいつ、女とかいたりするのかな。見るからにウブそうだけど)

よし、決めた。今度、椿を攫いに行こう。


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