不動→基山(→)←緑川っぽい



イナズマジャパン全員での紅白戦が終わった後。一緒に夕食を摂っていた緑川に夕食後特訓を付き合って欲しい、と頼まれ快諾し、誰もいないフィールドで特訓を始めてから早三時間。すっかり夜は深まり、夏特有のじっとりとした暑さが辺りに充満した。大体一時間半前に一度休憩を取ったが、自分は生まれつき暑さには弱い体だった。これはハイソルジャーになる為の訓練を受けても変わらなかった。要約すると、休憩からもう一時間半経った今、自分には少し水分補給が必要だった。とはいえ、あと少しで新しい必殺技が出来そうだと張り切る緑川の集中を途切れさせるようなことはなるべくしたくなくて、後三十分くらいなら、と考えた時、ボールを蹴った足が大きくふらついた。慌てて体勢を立て直した後、心配そうな目をした緑川と目があった。ああ、やってしまった。



「大丈夫か?具合悪いのか?」
「いや、ちょっと暑いだけ。水道行ってきていい?」
「そりゃ構わないけど、無理しないでよ?」
「ごめん、すぐ戻るから。緑川も無理しちゃ駄目だよ」



両手を垂直に合わせて顔の前まで持っていく。緑川は心配から安堵の表情に変わって、ああ、と返事をしてくれた。それから足早に水道に向かう。実は限界ギリギリだったらしい自分の体は脳内で激しい警鐘を鳴らす。こういった類の症状は自覚症状が無いと聞く。厄介だと他人事のように捉えながら、感覚だけで水道にたどり着く。本当はスポーツドリンクが一番良い。しかしこの場に無い物を求めに行く気力も無い。水分を取って少し休めば症状は軽くなる筈だ。歪み始めた視界に、これは手遅れなんじゃないかと霞んだ意識のどこかで冷静に分析しつつ蛇口に手を置いた所で、急いで隠れたような人の気配に脳が醒めた。



「………誰」



図らずもうんと低くなった声。相手が怖がってしまったらどうしようと直後に後悔の念に駆られたが、挑発を含んだ声と共に堂々と現れた姿を確認して先程とはニュアンスの異なる後悔を覚えた。



「おや?誰かと思えば、元ジェネシス様じゃないですかァ?」
「………不動、くん」



さっきより若干晴れた視界に不動が飛び込む。途端、蛇口に置いた手を払われ、掴まれる。何もしていないもう片方の手も掴まれ、驚いて自分の手を掴んでいる手を目で追えば、何事か企んだような笑みを浮かべた不動とかち合った。



「随分バテてんじゃねーか?」
「手、離してよ」
「振り払う力も無いってか」
「そうすることによって楽しむ君を見たくないだけだよ」



エイリア石を巡って少し因縁のある相手への本心だったが、振り払う力が無いのもまた事実だった。というより、俺の両手首をがっちりと掴んで離さない不動の両手の力に勝てるとは思えなかった。予想通り、笑みを消した不動がつまらなさそうに舌打ちをする。



「……その飄々とした顔がムカつくんだよ」
「じゃあいい加減離しなよ。君も飽きたでしょ」



いくら早々に退散して欲しくても、流石に足は使えなかった。不動は便乗するだろうし、幸か不幸か暴力沙汰を起こした自分を悲しむ人も居る。だからここは言葉を武器に対処する他無いと考えた。しかし手を離せの一点張りを決め込んだ俺を睨んでいた不動が徐々に笑みを取り戻すのを見て、背筋が凍った。
突然、右腕を強く引っ張られ、完全に油断しきった体は大きく傾く。うわ、と小さく息を飲み込んで、行き着いた先は不動の腕の中。抱き止められた条件反射で顔を上げると、顎に手を添えられて口に噛みつかれた。慌てて押し返そうと胸板や肩に自由な左手をやったが、びくともしない。右手は未だ掴まれたままだ。痛いというより苦しい口付けに、酸素を取り込む隙が無くなる。



「んんっう、ふ…っ!」



歯列をなぞって咥内で暴れる舌に望まない感覚と声が混ざって唇から漏れる。何とかしなければと焦り始めた矢先、掴まれた右手が自由になったと思ったらコンクリートの冷たい地面に押し倒された。水道の一角に肩をぶつけ、背中を地面に打った際に痛みから息が詰まる。一瞬離れた唇は再び重なって、ますます不利な体勢になった所で不動の腕がユニフォームに侵入してきた。不動の躊躇いの無い行為に恐怖さえ抱いた時、自分の咥内を支配していた舌を思い切って噛んだ。



「っ!?」
「っはあ、はあっ…!」



続いてありったけの力を込めて自分に跨る不動をどついて退かせ、地面を転がりながら危機を脱出する。加減も知らずに噛みついた舌から血の味が広がった。乱れた息を整えようと胸を上下させるが、水道に来る前より火照った体と気温がまた症状を加速させた。今度こそ倒れる。こちらを憎らしげに睨む不動が弱い自分をどうするか想像も容易い。色んな気持ちがない交ぜになって生まれた僅かな希望も有り得ないと否定的になって、向かってくる不動を睨み続ける。



「っテメー…!」
「ヒロト!」



僅かな希望が実現化した。驚いて自分を呼ぶ声の方に顔を動かすと、暗がりでもハッキリと、緑色のポニーテールを確認出来た。瞬間、それだけで安心した心は意識を手放した。





20100819




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