朝、目が覚めたら


『やあヒロト!おはよう!』


枕元にだいぶ透明な、俺にそっくりの和服の男が立っていた。


「…っぎゃああああああ!?」








[ 吉良さん と 基山くん ]








俺の悲鳴によって集まってきたイナズマジャパンの面々には、やはり今現在も隣でニコニコ笑っている半透明の男が見えていないらしい。誰か霊感の強そうな人は居ないだろうか。とにかく俺は見えていないみんなの心配そうな表情を晴らす為に、とりあえず嘘をつくことにした。


「大丈夫かヒロト!?何があったんだ!?」
「あ、うん、ちょっと…寝覚めの悪い夢を見てね。でも大丈夫だよ」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫、朝から騒いでごめんね」


やや早口で謝罪し、急かすようにみんなを部屋から追い出す。まだ心配そうな表情をした人も少なくなくて、すごく申し訳ない気持ちに駆られるけれど、俺は俺で非常に切迫していたから許して欲しい。扉を閉めた後一拍置いて、俺は後ろを振り向いた。


「あの……」
『あの子達が日本代表の子達かあ、個性豊かだねー』
「……吉良、ヒロトさん?」
『そうそう』


そう微笑んだ彼を改めてよく見ると、確かに顔は俺そっくりで、年は20代くらいに見える。俺が大人になったらこんな感じか、と漠然と思った。だが吉良ヒロトと名乗るそんな彼は半透明で、足の辺りは特にぼけている。俗に言う幽霊の特徴と完全に一致している。


『いやー、ずっと君に会いたかったんだ!』
「は、はあ…」


嬉しそうに言いながら人の寝台に座っている。何で幽霊の彼が俺に見えるのか、どうして急に現れたのか、訊きたいことはたくさんある筈なのに彼ののほほんとした雰囲気に全て負けてしまった。気がする。


『何はともあれ、俺しばらく君の傍に居るからよろしくね!』
「はあ……………えっ!?」
『ライオコット島面白そー』


選手全員に配られたライオコット島のパンフレットをペラペラと捲り始める彼。観光する気満々じゃないか。それにしてもポルターガイストってああいうことなのか。論点がズレた。


「しばらくって、え!?」
『駄目?』
「いや…駄目じゃなくて…」


若干上目遣いで訴えられたから渋ったとかそういう訳ではない。ただ、エイリア学園事件は吉良ヒロトの死が大体の切欠だったから、最大限に関わっている俺にとって少し気まずい相手でもあるからだ。しかし、彼が留まると宣言した以上、帰れと言うことも出来ない。まあ帰れという強い理由も特に無い俺は彼がどうにか満足するまでと納得することにした。


「あの、何て呼べば…」
『お兄ちゃん(はあと)でいいよ』


前言撤回、なるべく早く成仏して欲しいと思います。





つづく





時系列はライオコット島に着いた日くらい
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