楽しくなかったからだ。



両親のことはそんなに覚えていない。俺にとって大きな存在でもなければ、俺を形成するにあたって小さな存在でもなかったから。ただ覚えてるって言ったら、俺を見る刺すような視線の後の呪詛の言葉。気づいたら俺は俺みたいなガキがわんさか居るあの場所に居たんだ。その後の生活は――正直、すごく楽しかった。先にこの場所に行き着いたらしい幼なじみ、スッゲー気の強い女、いつもバンダナ付けてるあいつ、他にも面白い奴ばっかりで、そんな奴らとするサッカーなんかは、もう最高に楽しかった訳だ。そして、あの場所で出来た俺にとって大きな存在が二人。こいつらは色んな意味で特殊だった。片方は父さんの息子だとかでちょっと浮き気味の奴で、片方は言動が突飛で浮き気味の奴。これだけ言ったらまるで俺だけが変わり者みたいだ。いや、そうなのかもしれない。何故なら俺は、そいつらと居る時間が一番楽しかったからだ。



あのときまでは。



最初に変わったのはいつも笑ってたあいつだった。次に変わったのは妙に大人ぶってたあいつ。最後に変わったのは楽しかったあの場所だった。俺は一つも変わっちゃいない、変わってしまったのは俺以外の全てだ!



「気に入らねえんだよ…!」



新しく付け直されたあの二人の名前を口の中で転がした、いまいちピンと来なかった。でも正に、今の二人にはぴったり合っていたと思う。気に入らない、気に入らないんだ。俺を置いていったあの二人が。苦しい顔をしながらボールを転がすあの二人が。気に入らない!最後の最後に、俺はあの二人と同じ位置に追いついた。



楽しくなかったからだ。








[理念]
そのものに対する根本的な考え




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