「銀ちゃーん、行ってくるアルヨー!」
「いつまでもダラダラしてると、本当に頭腐っちゃいますよー!」
「何言ってるアルカ、新八ぃ。銀ちゃんの頭はもうでろでろのぐちゃぐちゃネ。手遅れアル」
「それもそうか」

失礼極まりない子供達は、あははははーと笑いながら、定春の散歩と買い物の為に家を出て行った。
朝起きてからずっと、何も行動する気が起きずに布団の上でゴロゴロする銀時の元に、既に西日が届く時分だ。
ダメ人間そのものであるが、未だ意識はぼんやりと、夢現を彷徨う。
台所から、水の滴る音が聞こえる。
つい先程までそこで作業していた新八が、水道の蛇口をしっかりと締めていかなかったのだろう。
水道代を考え締めに行かなければと思うのに、たん、たん、と規則正しくリズムを刻むその音がとても心地好く。
微睡む意識はいともあっさりと、深淵に沈んでいった。


***


相変わらず不用心な、鍵の掛かっていない引き戸を開けて敷居を跨ぐ。
玄関には見覚えのあるブーツが一足あるだけで、家にいるのが一人だけだと知れた。
しかし部屋はしんと静まり返っていて、人の気配が無い。
静閑な空間に響くのは、水の滴る音のみ。
たん、たん、とゆっくり刻まれるその音を辿って台所へと行き着いた土方は、水道の蛇口をきゅ、と締めた。
途端に滴下は止まって、部屋に静寂が満ちる。
土方は部屋の奥へ進み、寝室である和室の真ん中で穏やかに眠る銀時を見つけた。
それに呆れて溜息を吐き、傍らに腰を下ろす。
幸せそうな寝顔に、自然と頬が弛んだ。
カチ、カチ、と時計の針が時を刻む。
一定のリズムで刻まれるそれを無意識のうちに聴いていた。
静穏に流れるその音律がとても心地好く耳に届き。
暫しうとうととした後、眠る銀時の傍で、土方も意識を手放した。


***


数刻後帰宅した神楽と新八が、二人仲良く寝息を立てる姿を見つけ、呆れつつ微苦笑を浮かべて毛布を掛けてやった。

(08/10/21)


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