「好きだ」
縁側でぼんやりと月を眺めていた銀時を後ろから抱き締めて、告げた。
それを伝えたのは、これが初めてではない。
もう何度も言ったし、銀時はその度呆れを表しながらも受け入れてくれる。
銀時からそれを言われる事だって、稀ではあるが確かにあった。
…けれど時々、不安になる。
唐突に、どうしようもない焦りが沸き上がる。
銀時はまるで風のようで。
捕まえた気になっているだけで、気付けばこの腕をするりと通り抜けていきそうで。
…不安になる。
唐突に、どうしようもない焦りが沸き上がる。
「好きだ」
抱き締める腕に、力を込めた。
通り抜けていかないように。
この腕の中に閉じ込めるように。
「どうしようもないくらい、テメーに惚れてる」
思い付く限りの愛の言葉を。
不安に押し潰されそうな心で、けれど愛しいと思う気持ちを込めて。
「好きだ」
更に腕に力を込める。
まるで縋るように。
決して放すまいとするかのように。
…不安になる。
唐突に、どうしようもない焦りが沸き上がる。
「あいしてる」
ぎゅっ、と抱き締めて情けないくらいに泣きそうな声で、告げた。
銀時は、ゆっくりと身体を預けてきて。
「 」
ポツリと何かを呟いた。
小さな声で聞こえなかったけれど、目の前の銀時が耳まで赤く染まっていて。
その色に不安をひた隠し、風のようなこの男を確かに捕まえたのだと思い込んだ───。
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side:H
もう一個はこれの銀時視点です。
(08/05/01)