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第三者から見た感想



“真田副部長に捕まったから今日はそっちに行けねえ(´;ω;`)”

そんなメールが一斉送信で送られてきた。もちろん送り主は赤也。私たちは示し合わせたかのようにご愁傷様メールを返し、またも赤也から一斉送信で“Herupu Mi!”と返ってきたものだから思わず頭を抱えた。頼むからわざとであってくれ。


「で、今日の勉強会どうすんの?赤也抜きでやんの?」
「さっきたっちゃんにメールしたらやるからおいでって」
「うっし、了解」


プリントやワークを鞄に詰め込む沙耶を眺めつつ、私は携帯の画面と睨めっこをしていた。開かれたメール作成画面には仁王先輩のアドレスだけが入力された状態で、件名や本文は空欄のまま。このまま送ったら怒られること間違いなしである…じゃなくて。

昨日は勉強会があるからと夜の散歩の付き添いを断ったのだが、なんとなく今日も断ったらまたハンとジンに会えないうんぬんと駄々をこねられそうな気がしてどうするべきか決めかねている。勉強は早めに切り上げて散歩に行こうか、それとも諦めてもらって後日埋め合わせをする形にするか…。いやそもそもなぜ私がこんなことで悩まなければいけないんだ。そう思い至ったらなんだかどうでも良くなってきたのでそのままメールを送信した。まだ何も書いていなかった。


「ああ…間違えた…」
「何を?」
「仁王先輩に空メール送った。今日は散歩行きますかって聞こうと思ったんだけど」
「お、んじゃあ久々にあたしもハンとジンに会いに行こうかな。今日は早めに切り上げてさ」
「ホント!?実はずっと沙耶にもディスクドッグ見て欲しかったんだよ…!」
「見る見る。なんかすげー練習してるって聞いて気になってたからね」


にかっと太陽のごとく笑う沙耶さんのイケメンオーラマジパネエっす。

そんなこんなで「なんじゃ」とだけ書かれて返ってきた簡素なメールに沙耶のことを含めて返信を打ち、またも「プリッ」とだけ書かれて返ってきたメールを了承と受け取ってたっちゃんの家へ向かった。このプリッはおそらく嬉しいを誤魔化すプリッだ。会話の合間にしょっちゅう入ってくるものだからニュアンスがなんとなく分かるようになってしまったのが少々癇に障る。

赤也不在の勉強会は平穏無事の一言に尽きた。各々で苦手教科の勉強を進め、たまに休憩がてら雑談をして、分からないところは教え合って。この面子だと私は教えてもらうばかりになるが、まあそれは地力の違いがあるので致し方ない。そもそも立海は私たちと勉強の進み具合が違うのだ。

そして仁王先輩と約束をした時間の三十分前、夕飯をご馳走になるという幸弘を残して私たちはたっちゃんの家を後にした。事情を話したら深雪も来たいと言ってくれたので両手に華状態である。

三人で腹ごしらえにおにぎりを食べつつ玄関先で待つこと数分。向こうからだるそうに背中を丸めた仁王先輩がやって来た。しかしハンとジンを視界に収めた瞬間目をキラキラと輝かせて駆け寄ってきた辺りこの人も末期だなあと思う。


「おう、今日は暑かったからハンとジンがバテとらんか心配したぜよ」
「夜になって涼しくなったから大丈夫ですよ。…まあそれもいつまで持つかって感じですけどね」
「俺も暑いのは好かんのう。…で、今日はおまんらも一緒やったんか」
「こんばんは、仁王先輩」
「うぃっす。あたしらもお邪魔させてもらいます」


ハンとジンを撫でながら「ん」とだけ言って頷く仁王先輩。いつもこんな感じなので特に気にせずリードを渡したのだが、その様子を見ていた沙耶と深雪になんか慣れてるねと言われて盛大に顔をしかめた。仁王先輩は相変わらずプリピヨ鳴くばっかりで会話のキャッチボールをする気が微塵も感じられない。


「どこが」
「全体的に?」
「プリッ」
「あ、こらまたはぐらかそうとする!」
「そういうところが、かしら?」
「だからどこが!」


なぜか沙耶と深雪は顔を見合わせて笑うだけで、そのままこの話は終わりになってしまった。仲間外れ、ダメ、絶対。




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