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最近、学校で友井と話すことが多くなったような気がする。クラスが違ってしまったため四月の頃はそれほどでもなかったが、やはり中学最初の一年間を同じクラスで過ごしたのだからもともと仲はいい。廊下で会えばどうでもいいことを話すし、いつもぼーっとしている私と違って友井は知り合いがいることに気づくのが早い。あの視野の広さは私も見習うべきだなあと思う。

なぜこんなことを話したかと言うと、クラスの子たちが「佳澄ちゃんは友井くんのことどう思う?」と聞いてきたからだ。まあいい奴だよね、と最後に適当に締めて頷いたらなぜか盛大に溜め息をつかれた。なぜだ。

しかし、ハンとジンと遊んでいれば昼間あったそんな出来事も忘れてしまう私の脳ミソ。我ながらなんというかその…よくできた脳ミソだと思う。あえて言い訳をさせていただくとすれば、玄関を開けてすぐの場所に仁王先輩と予想外な人物がいて驚いてしまったせいなのだと言いたい。


「こんばんは…?」
「ん」
「仁王くん、挨拶はきちんとするものですよ。…こんばんは、飛川さん。突然私まで押しかけてしまってすみません」
「いやそんな気にしないでください!えーっと、お二人とも夕飯は済ませました?」
「はい。済ませて来たので大丈夫ですよ」


きれいに微笑む柳生先輩は仁王先輩が本来の役目を全うしているかが気になってついてきたらしい。どうも部活が終わったあとにすぐ帰ろうとしたり、ちゃんとご飯を食べているのか血色が良くなったことが気になったんだとか。

それはハンとジンに早く会いたいがため真っ直ぐ我が家へやってきてご飯を食べていたからです。…を濁し濁し話して苦笑いを浮かべた。柳生先輩は仁王先輩のおかんか。肝心の仁王先輩はハンとジンのリードを持ってさっさと歩き出してしまったのでずいぶんと先の方にいるが、どうせ行き先は公園と分かっているから見失っても問題はない。よって放置である。


「まさか仁王くんがそこまでご迷惑をおかけしていたとは…」
「いやいや、私も散歩の付き添いはありがたいですし、お母さんもご飯のことは息子も欲しかったから楽しいって言ってましたし、いいんじゃないですかね」
「ずいぶんと手のかかる息子ですがね」
「あはは、そんな感じですね」
「おまんら何笑っとるんじゃ」


足を止めて振り返った仁王先輩がじとりとこちらを睨んできた。私と柳生先輩はお互いを見て、再度仁王先輩を見て、にんまりと意地の悪い笑みを浮かべる。柳生先輩は私より人のいい笑みだったがまあ気持ち的にはにんまりだったのだ。案の定、蚊帳の外に置かれた仁王先輩は拗ねたように唇を尖らせている。そういうところが子供っぽいと思う。

そして仁王先輩は道路側にいた柳生先輩の隣に並び、無言でジンのリードを渡すと少しだけ機嫌が良くなったように見えた。私はその行動の意味が分からず首を傾げる。

仁王先輩の意味の分からないというか意味のない行動はよくあることだがそれでどうして機嫌がよくなったのだろうか。柳生先輩はどうやら理由を知っているらしく、仕方のない人ですよねと言って笑っていた。おかんというより奥さんみたいだなと思った。




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