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ほな、さいなら



スタート地点から少し離れた場所で一度地図を広げ、誰がついて来ているかを確認する。うさ耳はいない…が、金髪さんが辛うじて見えた。後ろにいる隠れる気のない黒髪はピアスさんだろうか。あ、誰かに引っ張られた。


「うさ耳取っちゃったんだなー。残念」
「さすがに目立つからね、あれは」
「とりあえずみんなにメールしようか」


たっちゃんが携帯を取り出し、相手がうさ耳を取っている旨と金髪さんとピアスさんともう一人誰かが私たちについて来ている旨をメールにて送信。少し経ってから他のみんなの現状報告メールが返ってきた。

沙耶・深雪ペアには白石さん、千歳さん、遠山くんがついて来ているらしいのだか名前で言われると誰が誰だか分からない。とりあえず騒がしいからすぐに分かったのだそうだ。となると赤也・幸弘ペアには残りの三人が当たっているのだろうが…今のところ姿は見えないらしい。なかなか手強い相手だ。


「で、作戦はどうしますか隊長」
「俺が隊長なの?…そうだなー、向こうの方が人数が多いからなあ」
「…いや、約一名頭数に入らなそうな人がいるけど」
「意外とそういう人の方が油断ならないものだよ」


能ある鷹は爪を隠す。

不敵に笑うたっちゃんは広げた指先を順に握り込むようにして折った。それに対して私が「ピアスさんは鷹というより猫のような気がする」と言えば「上手の猫が爪を隠すっていう言葉もあるからね。意味はだいたい同じ」という言葉が返ってきたので、なるほどピアスさんはやはり猫だったと頷いた。…なんか違うか。

まあそんなこんなで私たちが向かったのは離れ小島のようなアスレチックゾーンだ。隠れる場所が多く、決まった順路もないので撒きやすいだろうとのこと。島への行き来がイカダなので待ち伏せされたらアウトなのだが、「あの人たちはそういうロマンのないことはしないんじゃないかな」と指さした先にはイカダの順番待ちをする金髪さんとピアスさんとお坊さんの姿があった。正直ちょっと阿呆だなと思った。

先に着いた私とたっちゃんはひょいひょいと進み、高台から三人の動向を伺う。ここで私たちはお互いの上着を交換した。といっても私のカーディガンはたっちゃんには小さすぎるので腰に巻いている。


「あはは、金髪の人バランス感覚悪いなー」
「お坊さんは大きいから進みづらいんじゃない?」
「ピアスくんはこっちに気づいてるね。二人に言う気はないみたいだけど」
「三人が奥まで進んだら出よっか」
「だなー」


どうやら三人は別れて探すようだ。しかしルートは違えど三人とも奥へ向かって進んでいるので、うまく建物などの物陰に隠れてやり過ごし、適当なところでイカダに乗って離れ小島におさらば。イカダが島を離れたところでピアスくんが現れたが、やはり彼はやる気がないらしく後から来た金髪さんに何か言われても素知らぬ顔をしていた。…いや、苦虫を潰したような顔でうざがっていた。

エリアを移り、遠回りしながらコーヒーカップへ向かう途中で他のメンバーへ撒いたよメールを送信。沙耶と深雪のペアからは「なんか向こうが勝手に迷子になったからこれから向かうわ」というメールが、赤也と幸弘のペアからは「こっちは一氏さんと小春さんと小石川さんが来てた。でも今はどこにいるのか分かんねえ」というメールが返ってきた。やはり名前で書かれると誰だか分からない。

十分ほど歩いてコーヒーカップの前へ着き、みんなが来るまで並んでようと言うたっちゃんをどうにか押し留めて沙耶・深雪ペアと合流。やはり考えることは同じというか、二人の服装がちぐはぐになっている。お互いの格好を見て笑ってしまった。


「そっちは謙也さんたちだったのよね?どこで撒いたの?」
「向こうのアスレチックのところ。ノリのいい人たちで助かったよ」
「あたしらは着ぐるみが近くにいてさ、赤毛のちびっこがそれに気取られてはぐれた隙に、ね」
「また迷子になったのかあの子…」


さすがにちょっと心配だ。この広い園内ですぐに見つけられた一度目は運が良かったのに、その運もすぐまた逃がしてしまうとは。これが終わったらみんなで探すのはどうかと提案すると、あの人たちは新幹線の時間もあるだろうしそうしようとみんなが頷いた。

それからさらに十分ほど待ったところで赤也・幸弘ペアがやって来た。若干疲れたような顔をしたその後ろには…。


「うっふ〜ん!あたしを撒こうなんて十年早いわよ〜ん!」
「小春にロックオンされたら逃げられへんのや!この俺のようにな!!」
「もう、ユウくんったら!」
「すまんな、うちの部員らが迷惑かけて…」


いちゃつくオカマさんとバンダナさん、そして赤也たちと同じくらい疲れたような顔をしたツンツンさんがいた。これで負けた赤也と幸弘のペアがみんなにジュースをおごることが決まったわけだが…どういうわけかオカマさんが「小春メール送信!」と叫んでくねくねしている。それに合わせてバンダナさんまでくねくねするものだから私の顔はきっと最後に見たピアスさんのようなことになっているであろう。

…で、結局オカマさんのメールを見て大阪集団が全員集まった頃にはそれなりの時間になってしまったので、最後にみんなでコーヒーカップに乗ってから帰った。ちなみにやんちゃくんは爽やかイケメンさんがどうにかこうにか捕まえたらしい。

コーヒーカップでは、金髪さんがたっちゃんの回すカップに乗ってどえらいテンションの上がり方をしていたのと、相変わらずの無表情で高速回転するコーヒーカップの写メを撮っていたピアスさんが印象的だった。

なんだかんだ、鬼ごっこ込みで面白かったのでいい思い出になった…と思いたい。




ほな、さいなら

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