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結局みんな教えてくれるけど



「なんか三人で帰るの久しぶりだね」
「これで幸弘とたっちゃんと沙耶もいればカンペキだったんだけどなー」
「そうね。じゃあゴールデンウィークにまたみんなで集まらない?最終日は部活もお休みだし」
「「さんせー!」」


赤也、深雪、私の順に並んで歩く帰り道。他のテニス部面子もぞろぞろと並んで歩いており、中でも仁王先輩と歩くハンとジンは悔しいくらい絵になっているので極力視界に入れないようにしている。余談だが、半袖ユニフォームにハーフパンツで汗を流す柳生先輩を見て笑いそうになったときは深雪に頭を叩かれた。地味に痛かった。

そしてずっと気になっていることがひとつある。立海面子の中に私がいることも十分おかしいとは思うのだが、もっとおかしい人がもう一人いるのだ。…そう、今日の立海大以下略の相手校、なんちゃら学園のなんちゃらくんである(教えてもらったけどいろいろ忘れた)。


「マジマジ丸井くんかっこよかったCー!あのズバっていってヒュっての!」
「まあ俺が本気出せばあそこでパスっともいけたんだけどな」
「マジマジすっげー!」


マジマジすっげー異文化交流や。いったいなんの話をしているのかさっぱり分からない。それでいて二人の会話は成立しているようなのであそこだけたぶんバベルの塔的な何かが発生している。良かったね、言葉の通じる人に出会えて。


「飛川が失礼なことを考えている確率87%」
「100%でも構わないですよ」
「柳生先輩のことじゃないでしょうね」
「そ、それはもう済んだことじゃないですか深雪さん…」


蒸し返されると地味に痛いです。柳生先輩は気まずそうに咳払いしながら目を逸らし、私ではないが同じく変質者に間違えられた真田先輩も気まずそうに帽子を被り直している。本当にその節はすみませんでした…。

そういえば、相手校の人たちは立海に負けず劣らず派手な人たちだった。試合を見ることは叶わなかったがなんというかあの人たちはユニフォーム姿を見るだけでいい。それ以上は胃もたれか胸焼けでもおこしそうだ。特に泣きボクロの人とか。

そして派手な人たちはこれまた高そうなバスに乗って帰って行った。金髪のマジマジすっげーの人を残して。なんでもマジマジさんは丸井先輩の大ファンだとかで、泣きボクロさんが帰るぞと言っても嫌だの一点張りで丸井先輩から離れなかった強者である。最後は帰れなくなっても知らねえからなとか言われていたがマジマジさんは方向音痴か何かなのだろうか。ちょっと心配だ。


「心配といえば立海って中間いつ?」
「げっ!やなこと思い出させんなよ!」
「たしか五月末頃よ。…私、もう前みたいに赤也のカバーできないから肝に命じておいてね」
「え!?」
「え、じゃないでしょ。大事なのは日頃の積み重ね」
「うむ。その通りだ」
「真田副部長まで…!」


私は最終的に面倒臭くない方、つまり授業中に理解して宿題もきちんとこなすというタイプになったので特に問題はない。が、赤也はどう考えても一夜漬けの山勘タイプ。さすがに一年のときに習ったようなことまで全部教え直すのは無理がある。


「いつまでも甘ったれるんじゃなか」
「そうそう。古怒田は部活でフォローしてくれてんだからこれ以上手間かけさせんなっての」
「今回は自分一人の力で、というのもいいかもな」
「厳しいことを言うようですが、これも赤也くんのためです」
「はは、じゃあ俺も今回は英語教えなくて済むのか」
「なんかよくわかんねーけど、おめーもがんばれ?」
「ううう…!」


次から次へと言葉を重ねられ、マジマジさんに肩を叩かれたところで赤也が「あんたら全員潰す!」と叫んだ。でもちょっと涙声だった。なんだか可哀想になってきたので母にもらった黒飴ちゃんでもあげておくか。



結局みんな教えてくれるけど

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