top : main : IceBlue : 36/140


立海とサッカー部


修了式も終わり、無事春休みに突入した。沙耶はかねてからの宣言通りイギリスへ飛び、深雪は顧問の先生に贈る花束のデザインを考え、赤也は後輩ができるとはしゃぎながら部活に勤しみ、そんな赤也を馬鹿にする幸弘もなんだかんだ嬉しそうで、二人の様子を教えてくれたたっちゃんも早く試合に出たいと言っていた。

一通りまとめてみたが私が言いたいのはみんな部活だなんだとやることがあるのに私だけ暇でザ・ぼっち状態つまり寂しいということだ。愛しのハンとジンはいるが、急に暖かくなったもんだからすっかりエアコンの下から動かなくなってしまった。父は仕事、母はお友達とショッピングでザ・ぼっち状態つまり寂しい…。

そんな私のもとへかかってきた一本の電話。普段なら面倒くさいの一言で片付けてしまうが、暇で暇で仕方なかった私には天の助けにも思えたのである。


『もしもし佳澄!?お前んちたしか立海に近いよな!?昼飯買ってきてくれ…!!』


電話の主は東京に住む従兄弟のかず兄だった。なんで立海で昼飯?と思ったがどうやらサッカー部の遠征で立海まで来たのに弁当を忘れてしまったらしい。馬鹿だ。

立海サッカー部といえば幸弘がいるはず。かず兄対幸弘とか面白すぎる。運が良ければバスケ部のたっちゃんとテニス部の赤也にも会えるかもしれないし、おお、なんかテンション上がってきたぞというわけでやってきました立海…大附属中学校。かず兄も幸弘も試合中なのか電話に出ない。もうこのままグラウンドまで届けに行こうと思う。

春休みにも係わらず立海は部活動で活気に溢れており、これぞ青春というニオイがそこかしこから漂ってきている。ちょっと羨ましいかもしれない。しかし、散策がてらきょろきょろと視線を動かしていたら先生らしき人に呼び止められてしまった。事情を説明するとなんだそういうことかとグラウンドまで案内してもらえることになり、私服で一人突っ込むのが怖かった私は素直に頷いたのである。


「すみませーん!青学の生徒さんの親戚という子が来てるんですがー!」
「ああ、わざわざすみません!墨下ー!よーくお礼言っとけー!他の奴らもボール片付けて休憩!午後は一時半から試合だ!」
「はい!」


それまで合同で練習していたらしい二つのユニフォームが散らばって行く。案内してくれた先生にお礼を言い、こちらへ駆け寄ってきた青のユニフォームに向き直った。


「わりー佳澄!マジ助かった!」
「かず兄のおっちょこちょい」
「うっせ!あ、弁当何買った?後で金払う」
「よく分かんなかったから私が食べたかったやつ。あとパン」
「…おい、いくら俺でもここまで食わねえよ。午後からの試合動けねえって」


弁当二つにパンが三つ入ったビニール袋を見てかず兄は顔をしかめた。かと思えばチームメイトにからかわれて赤くなったりとなんとも忙しい。前も思ったけどかず兄っていじられキャラだよなあ。


「あー!やっぱ佳澄じゃん!なんでいんの!?」
「おー、よーっす幸弘。従兄弟のお昼届けに来たんだよ」
「マジで!?従兄弟って誰!?」
「なになに、佳澄ちゃんの彼氏?かず兄どうするよ、大事な従姉妹に変な虫が」
「え、何お前彼氏とかいんの…?」
「いないってば。真に受けないでよ」


なんだか次から次へと人が集まってきてしまった。私に気づいた幸弘がボールを抱えてやって来て、そんな幸弘に気づいたかず兄のチームメイトがまたかず兄をからかって、それを真に受けたかず兄が私と幸弘を見比べる。友だちだと説明しても本人そっちのけで盛り上がっているし、もう勝手にやってくれとしか言いようがない。

しかし、弁当を多く買ってきてしまったのが運の尽き。一緒にお昼食おうぜと誘われて私と幸弘は一時間近く話のタネにされたのであった。楽しかったけどさすがに疲れた。




立海とサッカー部

←backnext→


top : main : IceBlue : 36/140