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聖戦前夜


私たちのテストが無事に終了した頃、立海はテスト前勉強期間に突入した。

今回は立海組も勉強会を別々に行うらしく、部活の先輩に捕まった赤也から頭が爆発するメールが送られてきた。頭の外側は手遅れなレベルで爆発していると打った文字はわずかに残っていた良心で消しておく。代わりに私の個票を写メって送ったら爆発しろと返ってきたので、わずかに残っていた良心も消し飛ぶというものだ。後で覚えてろよ。

そして沙耶、深雪と約束したバレンタイン前日。ハンとジンの世話を母に任せた私は部活のある二人に代わって材料の買い出しに来た。どうせ友チョコなのでラッピングは百円均一で済ませる。ちなみにこちらはあらかじめ購入済みだ。


「バター、バター…どこら辺にあったっけ」


ヨーグルトかチーズあたりと並んでいた気がする。と足を向けたのだが残念なことにバター売り切れの文字が…。なんということだ、世の女の子たちのバレンタイン戦争に負けた。これたぶんどこに行っても売ってねえ。

スーパーを梯子しようが似たような状況だろうと判断した私は早々に踵を返し、家に買い置きしてあったバターを拝借することにした。後で母に怒られるような気がするがやむを得ない。約束の時間までは泊まりの用意をしたりポケモンをしたりして潰し、沙耶の部活終わったメールを受け取って藍田家へと向かった。


「おじゃましまーす」
「お、来た来た。深雪ももうすぐ着くってメール来たから、先に準備始めるよ」
「おいーっす」


机の上を片付けたり食器を出したり。ほどなくしてやってきた深雪と三人でわいわいきゃっきゃとクッキー作りを楽しみつつ、帰りの遅い沙耶のお母さんに代わって夕飯の支度も進める。

作った生地を三等分に分け、各々好きな形に型抜いていく中、私は一円玉サイズのミニマムクッキーと煎餅サイズの特大クッキー作成に勤しんだ。何その煎餅誰にあげるのと笑われたが、あいにくこれは自分用だ。生焼けにならなければいいが。

そうして出来上がったクッキーを冷ましてから適当にラッピングし、片付けやお風呂といったもろもろの雑務を済ませて布団に入り、レッツ・ガールズトークタイム…とはならないのが私たち三人のいいところのような悲しいところような、まあそんなかんじのところである。


「そういえば佳澄と沙耶はテスト終わったのよね。結果はどうだった?」
「上々。今回は赤也の面倒見なくて良かったからな」
「私も上々。順位上がったよ」
「ふふふ。二人ともおめでとう。私も今回はちょっとだけ自信があるの」
「首席取っちまえよ。深雪ならできるって」
「あら、じゃあ次は目指してみようかしら」


久しぶりに三人ゆっくり話せるのが嬉しくて、ついつい夜更かししてしまった。明日は女の子たちの聖戦。きっとめくるめく青春劇が繰り広げられるのだろうと思ったら他人のことなのになんだかわくわくした。いや、他人のことだからこそか。

何がともあれ、相変わらず色恋沙汰には縁遠い私たちなのである。




聖戦前夜

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