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揺れる虹色


近所の大きな公園でフリスビーを投げて遊んでいた。もちろん、愛犬二匹も一緒。いわゆるディスクドッグというやつだ。

偉大なる漫才コンビからとった愛犬の名前はハンとジン。ちなみに小さいほうがハンで大きいほうがジン。知らない人には某人気マンガを連想されるが、どちらも面白いという意味では似ているかもしれない。だから何って話だけど。


「ジン、ステイね、ステイ。ハン、レディ…ゴ!」


正式なルールうんぬんは知らない。ただ昔からお父さんと遊ぶことの多かったフリスビーが、私と愛犬たちの間を繋ぐのは早かった。

ハンが走っている間、ジンは待て。戻ってくるとすぐに立ち上がり、入れ替わるように走り出す。最初は二匹いっぺんに走っていたけど、慣れた今ではお互いに順番を待つようになった。あまりのお利口さんっぷりに涙がちょちょ切れる。

私、というよりハンとジンはこの公園ではちょっとした有名犬だ。二匹のシベリアン・ハスキーってだけで目立つし、何よりディスクドッグがとても上手だから。私たちが行くのはいつも夕方から夜の間。この時間に犬の散歩に来るのは子供が多い。最初はこの強面にビビってたけど、今ではいつものやってと笑顔でせがみに来るようになった。ふふん、そのままうちの子たちにメロメロになればいいさ。


「おーう…ちょっと休憩させて。佳澄さんはお前たちほどの体力はないんだよ」


しかし、小一時間も休みなくフリスビーを投げ続ければ私の方がへばる。雪の中でもぐんぐんソリを引くシベリアン・ハスキーの体力に、私なんぞがついていけるわけがないんだ。

木陰のベンチにどっかりと座り、持ってきたスポーツドリンクで喉を潤す。後でハンとジンも水分補給させてやらないと。でもちょっと待ってね、脇腹痛い。スーハーというよりゼーハーに近い呼吸を繰り返していると、風に乗って動く球体にピントが合った。シャボン玉だ。


「いいなー、今度私もやりたい」


小ぶりのシャボン玉がいくつも流れてくる。きっと近所の子が吹いているんだろう。私もやりたいけど、さすがに貸してとは言えない。間接ちゅーだ。それはいかん。たしか蜂蜜を混ぜると割れにくくなるんだよね。よし、明日買いに行こう。覚えてたら。

どっこいしょと年寄り臭い掛け声と一緒に腰を上げ、愛犬たちの水分補給のために私はその場を後にした。



揺れる虹色

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