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あっさりバレンタイン計画


毎度おなじみテスト前勉強期間。ただし、今回は立海のテスト期間と一週間ほどずれたので勉強会は私と沙耶のみで行う。沙耶はやっと自分の勉強に集中できる(というより赤也の面倒を見なくていい)と終始ご機嫌だ。

今日は沙耶の家で勉強。明日は私の家、明後日は沙耶の家…とお互いの家で交互にやる予定。教科書やノートを詰め込んだ鞄を肩から提げて玄関を開ければ、ふわりと笑う沙耶のお姉さんが出迎えてくれた。相変わらずの美しさに目が眩む。

お姉さんはあらかじめ沙耶か勉強会のことを聞いていたらしく、クッキーを焼いて待ってくれていた。なんというかこれが女子力かと恐れ戦いたのは私の戦闘力が0に等しかったからだろう。致し方ない。


「さて、範囲が広いし怪しいとこから潰してくか。佳澄は何がヤバイ?」
「んー、今回は割と平気。とりあえず数学の応用からやる」
「あたしも怪しいとしたらそこだわ」


どうだこの会話!すごく頭がいい人っぽいだろう!たった二回、されど二回。立海組と勉強会をしたとき、教えてもらう側に回ったのは私と赤也の二人だけで、特に赤也は二人がかりというか車懸りの陣というかとにかくいろんな人がかわりばんこに教えた。

単刀直入に言うと反面教師から学んだのだ。このままではいかんと思った私は常日頃から勉強を頑張るようになった。ちなみに沙耶は赤也に時間を取られることを想定して、出された課題をほとんど終わらせている。総合すると、私たちにはテストに対する余裕があった。


「そういやもうすぐバレンタインだっけ」
「まさか沙耶もついに恋を」
「してねーからな。友チョコどうするかって思っただけ」
「それなら私、たっちゃんにはあげたい。去年お世話になったし」


つらつらと計算式を書き並べ、頭のすみにはたっちゃんの柔らかい笑みを思い浮かべる。勉強会の場を提供してもらったり、そこで教えてもらったりとだいぶお世話になった。それにたっちゃんの家ならすぐそばだからいつでも渡しに行ける。柳先輩にもあげようかという話が挙がったが、そこまで親しい間柄ではないという理由で却下になった。

沙耶もペンを動かす手は止めず、たっちゃんにあげるなら幸弘と赤也にもやらなきゃダメかと嫌そうな顔をした。深雪はチョコよりクッキーの方が好きだったから、今度三人で一緒に作れないか誘ってみよう。そこで上手にできたのをたっちゃんにあげて、残りカスを幸弘と赤也にあげればいい。よし、決まりだな。


「今年はお姉ちゃんに教えてもらえるか分かんないけど、またあたしんちで作る?」
「助かります。深雪にもそれでメールしていい?」
「頼んだ」


“バレンタイン前にまた沙耶の家でクッキー作らない?”

内容は簡潔に。立海の子に誘われているかもしれないから、日時の細かい指定はしなかった。ほどなくして返ってきた返信にはまた13日に泊まりでできないかしら、と書かれていて、沙耶は当然のように笑って頷いた。

周りの子たちのような甘酸っぱさはないが、少しくらいこの浮かれた雰囲気に便乗してもいいだろう。




あっさりバレンタイン計画

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