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仲良しこよし


忘れるだろうと思ったのに…。


「あ!やっと来た!」
「なんで赤也がここにいんの」
「お前が電話もメールもシカトするからだっつーの!」


いつも通り向かった公園。そこにはぷんすこ怒りながら足を踏み鳴らす赤也がいた。どうやら連絡が取れないから待ち伏せしていたようだ。寒い中待ち伏せするほど怒っていたのかというとそういうわけでもなく、今は久しぶりだなと笑いながらハンとジンを撫でくり回している。

私もさすがに全部無視したのは悪かったと思っている。だが、素直にそのことを謝ったら気持ち悪いと言われたのは心外だ。このワカメ野郎。

赤也は肩にかけたテニスバッグを背負い直し、逆の手でジンのリードを持つと当たり前のように歩き出した。人気のない公園内。ぽつん、ぽつんと並んだ街灯が申し訳程度に道を照らしている。


「お前、いっつもこんな時間に公園来てんの?」
「うん。大体は」
「変質者に間違えられんなよ」
「うっせー増えろワカメ」
「またワカメっつったな!?」
「そういえばポケモンだけど」
「話変えやがった」


毎日顔を合わせていた去年までに比べれば会う回数は格段に減ったが、会えば前と同じようにぽんぽんと会話が進む。学校で、クラスで、部活で、先輩が。部活動に所属していない私は縦にも横にもほとんど繋がりがない。対して赤也はテニス部でいい先輩たちにも恵まれ、元々の懐っこい性格からクラス外にも友だちが多く、それに比例するように話題も多い。赤也の話を聞いていたら私ももっと友だちが欲しくなった。

公園内を一周し終わっても話題は尽きず、赤也は駐輪場に停めていた自転車を押しながら私の横に並ぶ。どうせ家の方向はほとんど一緒だ。長い付き合いだからお互いに気を遣うこともない。


「あ、お守りちゃんと渡したからな」
「お守り?…ああ、初詣のときの」
「おう。幸村部長が『ありがとう、いつも悪いね』って言ってたぜ」
「そっか。私らね、初詣のとき幸村先輩の病気が早く治りますようにってお願いしといたから」
「マジで?俺も俺も!」


お前ら三人とも強運だから効きそうだな、と赤也が笑う。強運かどうかは別にして、みんなでお願いしたのだからきっと神様も叶えてくれるだろう。“早く”のところをもっと強調してお願いしても良かったかもしれない。赤也の口から出る話題に“幸村部長”という言葉が多いことに気づいてそう思った。

お互いの家への分かれ道に立って、メールシカトすんなよ、ならあんまりしつこく送って来ないでよ、と軽口を叩き合って手を振る。家に着いてから昨日のメールの返事をしてやろうと作成画面を開いたのだが、間違って件名も本文も無記入のまま送信してしまって赤也に怒られた。

とりあえず、幸弘に勝ちたいのなら幸弘より頭のいい人にアドバイスをもらえと送り直してその日は眠りについた。




仲良しこよし

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