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雪に焼かれて焦がれて


輝く銀世界に目が眩む。しかし何より、目の前で千切れんばかりの勢いで振られる二つの尻尾に私の中の何かがくらっくらきていた。現在地長野、父の実家である。

私は今日この日のために冬休みの課題を全て終わらせ、体調を整え、万全の体勢でやって来たのだ。早朝から車に揺られること五時間弱。着いてすぐにおじいちゃんとおばあちゃんに挨拶を済ませ、ハンとジンを連れて庭へと飛び出した。


「あああ!やっぱりお前たちは雪の中だといっそう眩しいね!」
「バウッ!」


ぴんと立ち上がった大きな耳。白の中に浮かぶ黒。蹴散らされる雪が舞い上がり、彩度の低い世界はどこまでも幻想的だ。デジカメのメモリーもえらい勢いで減っていく。

ミニ雪だるまを頭の上に乗せたベストショットにはじまり、かまくらでお昼寝する二匹や、夕焼けで赤く染まる雪景色と凛々しい横顔、こたつから顔だけ出して並んだ姿に雪の中でじゃれる姿エトセトラ。もちろんその都度いつもの五人にメールで送りましたとも。なぜか赤也から「お前の写メは?」という返信が来たので、雪の中に倒れ込んで作った人型を送っておいた。ちなみに返事はなかった。

おじいちゃんとおばあちゃんは、今時珍しく外を元気に走り回る私に「さすがうちの孫だね」と笑ってくれて嬉しかったので、去年以上に雪掻きをがんばった。どうやらジョギングを続ける内に体力がついたらしく、次の日も筋肉痛にならずに済んだのでこれからも続けようと思う。

しかし、三泊四日などあっという間だ。若干涙目になりながらおじいちゃんたちに手を振り、私の冬休みは幕を閉じた。


「佳澄、なんか痩せた?」
「かもしれない。おじいちゃんちにいる間は朝から晩まで走り回ってたし」
「小学生か。しかもあんた雪焼けしたでしょ。顔だけ黒い」
「マジか」
「マジだ」


顔だけ黒いとか…完全に油断していた。夏休みじゃあるまいし、クラスメイトが全員そろっても休み前より黒くなったのなんて私だけだ。先生にまでネタにされる始末。くそ、赤也が写真送れなんて言ったのはこういうことだったのか。

始業式後、どうしてそんなに焼けたんだよと聞かれたのでこれ幸いと言わんばかりにハンとジンの自慢をしておいた。みんながげっそりする中、少し前まで隣の席だった友井だけが「前も思ったけど飛川って写真うまいよな」と褒めてくれた。驚いて頭を叩いてしまったのは正直すまんかったと思っている。

家に帰ってお昼を食べて、ハンとジンを連れて公園へ向かう。冬休みが終わってしまったことが悲しくてしょうがない。雪、雪が欲しい…あ、帰りに雪見大福買って帰ろう。




雪に焼かれて焦がれて

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