top : main : IceBlue : 19/140


強運トリオ


年越しはハンとジンをむぎゅっと抱きしめて越した。夜遅くまで起きている家族に釣られてはしゃいでいたのだが、その分元旦はお寝坊さんだ。日が高くなっても気持ちよさそうに眠っている二匹を携帯で撮影し、新年の挨拶とともにメールを送信。おっと、そろそろ出ないと約束の時間に間に合わない。

今日は沙耶と深雪と初詣に行くことになっている。待ち合わせ場所で合流し、近くの神社へ向かう。神社が近くなるにつれて人通りが増え、今年成人式を迎えるであろうお姉さんの振り袖がとても眩しかった。


「先にお参りしてから回る?」
「うん。あ、あとおみくじも」
「じゃあ大吉以外引いた奴が好きなもん買ってもらえるってことで」
「よし乗った!」
「いいわ。今年こそ大吉以外を引くわよ」


普通は逆じゃないかと言われそうだが、私たちはこの神社で大吉以外のおみくじを引いたことがない。毎年毎年、初詣で引くのはなぜか決まって大吉。自分一人ならまだしも、三人揃ってそんな結果なので正月はわざと大吉をたくさん入れているのだろうという結論になった。

参拝客の列に並び、お賽銭を入れるために財布を開ける。いつもは特に意味もなく五円玉を入れていたが、今年は百円玉を入れることにした。お願いすることはもちろん決まっている。


(幸村先輩の病気が早く治りますように)


二礼二拍手、一礼。参拝の列から外れて沙耶と深雪の顔を見れば、二人も同じようなお願いをしたんだと分かった。それからいつものようにおみくじを引いて、わくわくしながら紙を開いて、見せ合った三人の結果に思わず笑ってしまう。


「あはは!やっぱりみんな大吉!」
「ここの神社、絶対大吉しか入ってないだろこれ」
「誰か他の人にも聞いてみたいわね」
「赤也辺り来てそうじゃね?ちょっと電話かけてみるわ」
「じゃあ私、お守り買って来る。病気治したいときってなんのお守り買えばいい?」
「病気平癒よ。私たちはここで待ってるわね」
「はーい」


簡単に待ち合わせ場所を決めて、私はお守りを買うための列に並んだ。こっちは参道と違って年齢層が高めだ。お年寄りがお札と破魔矢を買っていたり、お父さんらしき人が交通安全のお守りをいくつも買っていたり。そういえば私もお守りを買うのは初めてのような気がする。お守りは誰かのために買うことの方が多いのかもしれない。

それからようやくお守りを買って元いた場所へ戻ると、そこにはすでに赤也の姿があった。年明けの挨拶を済ませ、お守りを託し、本題であるおみくじを引かせる。何か文句を言っていたような気がしないでもないが、私たちにとって重要なのはおみくじの結果の方なのだ。


「お、中吉」
「なんで!?」
「うっそ、初めて見た」
「うらやましいわ…」
「は?別に普通じゃね?」
「あたしら三人ともここの神社で大吉以外引いたことねえもん」
「…マジかよ」


赤也にはまるで信じられないものを見るような目を向けられたが、私たちからすれば赤也の方が信じられない。三人そろっておみくじを見せたらようやく信じてくれたけど。


「前から妙に運がつえーとは思ってたけど…っと、やべ!丸井先輩から電話かかってきた!」
「テニス部で来てんの?」
「そーいうこと。…あ、もしも…うっへー、すんません!すぐ戻ります!……え?小学校ん時の友だちっすけど。……はい。あー、分かりました。連れてけばいいんすね?うす、んじゃ鳥居の所で!」


なんとなく流れの読めた私と沙耶は深雪を掴んで赤也から距離を取った。


「つーわけで一緒に来てくれ!」
「嫌だよ。知らない先輩に会ったって気疲れするだけじゃん」
「丸井先輩とジャッカル先輩は知ってるだろ?」
「“は”ってことは他にもいるってことでしょ」
「う、まあ…あ!柳先輩もいるぜ!」
「あら、柳先輩にはご挨拶しておきたいわ」
「この前のテストのこともあるしなー。…後でなんか奢れよ」
「うっす…」


結局、私たちが折れる形…のような赤也が折れるような形でついて行くことになった。私はたこ焼きが食べたいと言ったら沙耶のチョコバナナと意見が割れたので、間を取ってじゃがバターで手を打とうと思う。




強運トリオ

←backnext→


top : main : IceBlue : 19/140