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私という人間の印象


よく考えなくともクリスマスというのはそこら中カップルだらけになる。いささか盲目的な彼、彼女らは人目もはばからずにいちゃこらいちゃこらいちゃこら…。ああいうのを見ちゃうとやっぱり彼氏とかいらねーわと改めて思ったクリスマス午後二時のことである。

沙耶が部活後、一旦着替えに帰宅してからいつもの公園で合流した。二人とも服の系統は違うがとてもおしゃれさんな上にすらりとした長身なので、間に挟まれたちんちくりんな私はなんとも残念な感じだ。数センチでいいから分けてほしい。

時間があれば遠出もしたかったけど、今日はクリスマスだからどこも混んでいるだろうし。ということでいつも通り近くのショッピングモールへ向かった。服を見て回り、残り少なくなっていたノートとペンを購入し、休憩がてらクレープを食べる。

私と沙耶がちょっとトイレに行った隙に深雪が男数人に囲まれていた時は正直焦った。もっとも、深雪は自分が話しかけられているなど微塵も思っていなかったらしく、オール無視で躱していたが。


「深雪はもうちょい自覚しろ。警戒心持て」
「右に同じ」
「自覚って…何を?」
「美人ってこと」
「あら、沙耶の方が美人じゃない。佳澄だって可愛いし」
「…返り討ちにされた」
「…右に同じ」


普段、同性異性問わず容姿を褒められることなんてないから私たちは真っ赤になった顔をそっと背けた。よく分かっていない深雪だけがこてん、と首を傾げている。そんな姿もやっぱり絵になる。

一通り遊んだ後、プリクラでも撮るかとショッピングモール内のゲームセンターへ向かって歩き出す。きっと男連ればっかだぜ、と嫌そうに舌を出す沙耶に、周りは女の子ばっかりで居辛いでしょうね、と笑う深雪に、眠いと欠伸をこぼす私。

不意に「あ」という知り合いでも見つけたかのような声が聞こえた。二人は先ほどのことがあったので無視していたが、私はなんとなくそちらを向いてしまった。


「「シベリアン・ハスキーの」」


そろって呟かれた言葉に、思わず周りを確認してから自分自身を指さした。だって、シベリアン・ハスキーの、なんて言われるような子は私しか知らないけど私はこの人たちのことを知らないから。しかしなんだか妙に目立つ人たちだな。




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