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祈りの鶴が飛んでいく


期末テスト終了から数日後、赤也の答案用紙の写メが私と沙耶、深雪、たっちゃん宛に一斉送信で送られてきた。満点とまではいかなかったけど、クラス内でもそれなりに良い順位に入れたらしい。私は折り鶴を折る手を止めて沙耶とハイタッチを交わした。

深雪は本気で赤也に満点を取らせようとしていたらしく、やっぱり人に教えるのは難しいわというメールが送られてきた。むしろあの馬鹿を全教科カバーできたことで満足していない深雪がすごいと思った。

すごいと言えば柳先輩もだ。今回の勉強会だけで何度感謝したか分からない。柳先輩特製ノートの最後のページには、深雪をはじめとしたいつもの面子からお礼のメッセージを書き込んでおいた。赤也が忘れずに渡してくれたか後で確認しよう。


「っしゃー!あと五十切った!」
「私もあと二十で終わるー」
「佳澄早っ。深雪ももーちょいで終わるって言ってたしなー。あたしも頑張らないと」


休み時間を利用してせっせと折り続けているのは幸村先輩に贈る折り鶴だ。直接の面識はないから赤也伝いに渡してもらうことになっているが、他からももらっていそうで邪魔にならないかと不安だったりする。まあそのときは赤也に引き取ってもらうしかない。

私と沙耶の机の上にたまった折り鶴を見て、クラスメイトが誰か怪我でもしたの?と心配そうな顔で聞いてきた。友だちがお世話になってる先輩が入院してさ、と答えれば今度は手伝ってもいいかという質問が返ってくる。答えはもちろんYes。みんなそれぞれ、想いを込めながら折ってくれた。

そして立海組もノルマを達成したという連絡を受け、その週の土曜日に折り鶴を受け取りに行った。沙耶と深雪と一緒に折り鶴を繋ぎ合わせ、出来上がった千羽鶴を赤也に託す。柳先輩のノートはと聞いたら「あ」と間抜け面を晒したので引っ叩いておいた。忘れんな馬鹿。


「早く治るといいね。えーっと…幸村先輩」
「だね。つーか会ったこともない人に千羽鶴作ったのなんか初めてだよ、あたし」
「引かれないかな」
「大丈夫よ。幸村先輩はそんな人じゃないから」


赤也の家に寄った帰り道、伸びる三つの影に視線を落とす。深雪がそう言うんなら大丈夫だと思いたい。

そういえば、足の生えたアグレッシブな鶴を折って長らく行方不明になっていたのだが、気づかない内に深雪が繋いでしまっていた。どうか幸村先輩が気づきませんように。



祈りの鶴が飛んでいく

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