☆花束
「あの花、かわいか」
周りにある建物や景色が彼女のためにあるように思えるほど、僕は彼女しか見えなくなった。おっどろいたなあ。まさかサファイアが乙女みたいなことを言うなんて。あまりにも驚いたから、瞬きを五回もしてしまった。 どの花さ、そう言うと、あれあれと指をさすサファイア。 その先にあったのは、お花屋にある、赤と黄色いの二種類の花。ふーん、可愛い花だね。再び彼女に目線を向けると、脳に稲妻が走る衝撃を初めて経験した。その稲妻の原因は彼女。優しく目を細め、首をかしげてふんわりと笑っているのだ。僕は醜い顔つきになり、彼女から顔をそらす。そらさなければいけないような気がした。
「っあの花、好きなの?」 「……ちょっと、気になるだけったい。不思議やね、あんなにたくさんかわいか花があるのに、あの花が輝いて見えるんよ」
何でやろね、と困ったように笑うサファイア。 僕はいてもたってもいられず、ダッシュで花屋に直行し、この花、ここにあるだけ全部くださいっ! とお金を出して叫ぶ。花屋の店員は聞き間違いかと思ったのか(まあ、思うだろうね)全部ですか? と花を聞き返す。そう、それを全部です! サファイアはそんな僕の行動に驚き、服の裾を破けそうなくらい引っ張る。
「なにしとっと! 他にも買いたい人がおるかもしれんのに!」 「だって! 君に全部あげたいんだ! 君をcuteなsmileにしてくれたこの花全部、僕の手から君へプレゼントしたいんだよ!」 「なっ!」
口説き文句にも聞こえ、一瞬で花と同じように赤くなるサファィア。 お待たせしました、と綺麗な青いリボンと白いふりるの包装紙に包まれた花束を受け取り、サファィアに満足げに突き出す。それが悔しいのか、目を合わしてはくれなかったけど、ありがとう、と両手で抱えるのもやっとな花束を受け取ってくれた。
「ルビー、お金……」 「大丈夫さ。それより、感想を聞かせてよ」 「そんなの、嬉しいしか言い表せんとっ」
先ほどよりもっともっと可愛く笑うサファィアに、胸がぎゅーっと締め付けられていく。
(やばい、僕も嬉しい!) 100302
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