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あんたの気持ちなんてとっくに知ってるから


 背中に視線を感じる。振り返ってみると、そこには先輩と呼ぶべき女。いつも通りに話し掛けられながら、他の男とは僅かに態度が違うのに気付いている。


「任務後なのに服とか汚れてないのね」
「まあな」
「生意気ねえ。まあ、実力が伴ってるからなんとも言えないけど」


 こんな、つまらない内容の会話ですら、にこやかに嬉しそうであるのは、俺の前でだけ。頬が薄く色づいて、ほのかにピンク色になっている。話せるだけでそんなに嬉しいのか。俺も、人のことは言えないが。


「サスケ君には、彼女とか居ないの?」


 会話の流れでの自然な質問(、と見せ掛けた決死の質問)。それにわざと「なんでそんなこと聞くんだ」と、意地悪く返す。案の定答えに詰まり、困ったように眉を八の字にして頬を染める。かわいい、かお。


「そ、それ、は……」
「…“それは”?」


 急かしてやると、ますます困った顔をする。どうしようか、楽しくなってきた。
 ついクツクツと笑い出してしまうと、紅潮した頬のままきょとんとこちらを見る。年上の割には幼い表情をする女性(ヒト)だ。


「ど、どうして笑うの?」
「いや、悪い」




あんたの気持ちなんて
 とっくに知ってるから





ぱっかりと口を開けたままみるみる真っ赤になった彼女を抱き締めてしまったのは、不可抗力だ。


お題提供:《確かに恋だった》
『一枚上手な彼のセリフ』
「あんたの気持ちなんてとっくに知ってる」


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