顔真っ赤にして否定されても 「とーうっ」 「ぅっ、…重いぞ」 「おもくなーい」 女の子に対して「重い」だなんて、デリカシーが無いなぁ。そんなこと言うならホントに重くなってやるぞ!(いやならないけど) 椅子に座って何やら本を読んでいたから、うずうずして思わず抱き着いた。(無防備な背中って飛び付きたくならない?) 不意打ちだったらしくかなり前のめりになったサスケに意外に思う。いつも大抵気付いてるのに。手元の本を覗き込んでみると、なにやらサスペンスな内容。サスケが恋愛ものやファンタジーものや妖怪ものを読むとは思わないけど、これはこれで少し意外だ。昼ドラ並にどろどろした関係からの殺人事件、というイメージしかないのが悪いのか。 「面白い?」 「まあまあな」 「ふーん…」 また読書を再開してしまったサスケ。無意識に唇が尖る。 なんか小腹空いたし、軽く何か食べようかな。そう思ってサスケから離れる。冷蔵庫を開けてみると、プリンを発見したのでそれを食べることにした。(サスケが買ってきてくれたのかな) 「レッツ プッチン!」 密かに嬉しくなってテンションが上がる。 白い皿の上にぷるんと落ちたプリン。焦げ茶色のカラメルがとろりと垂れて、「ぼくはおいしいプリンだよ! はやくたべて!」と急かしたので早速スプーンで一掬い。カラメルがほろ苦くてプリンが甘くてやわらかくて絶妙な味と食感で美味しい。流石に自分から「おいしいプリン」と名乗っただけはある。(痛い子とか言わない!) 「んーっ、おいし。サスケも食べる?」 「食うわけねぇだろ」 「…むー」 シュラリとページをめくり、小説を読み進めるサスケ。一応聞いただけじゃないか、そんな言い方しなくても良いじゃないか。 再び下降したテンション。ぱくっとプリンを食べるけれど、さっきより味気ない。 すると本を閉じる乾いた音がした。ちらりと横目で見るとサスケはじっとこちらを見ていて、照れて頬が少し熱くなる。見詰められるのには慣れてない。 「……なに?」 スプーンを咥えたまま、もごもごと聞いてみる。サスケは笑って、頬杖を突く。そして私のほっぺを指でやわらかく押して言った。 「そんなに構って欲しかったのか?」 「! なっ」 『ニッ』と『にっこり』を足して二で割ったような笑顔でそんなことを言い出した。スプーンがカランとテーブルに落ちてしまったのを、床に落ちる前に慌てて取る。 何を、言ってるんだ! そういう訳じゃない! 「ちが、う!」 「俺のことで一喜一憂してた癖に」 「そっ、そんなことないもん!」 「完全に拗ねてただろ、今」 「…!」 頬を膨らませて、唇尖らせて、眉を寄せていただろう。そう指摘される。明らかに不機嫌だったと。 心当たりがあるから否定できず、クツリと笑うサスケに向かって口をぱくぱくさせる。何か言ってやりたいのに言葉が出ないのだ。 「ホントにお前、俺のこと好きだな」 「ちっ、ちがう! そんなんじゃないってば!」 顔真っ赤にして 否定されても 可愛いやつ かっ、かわいくないもん! お題提供:《確かに恋だった》 『一枚上手な彼のセリフ』 「顔真っ赤にして否定されても」 [←] [→] 戻る [感想を届ける!] |