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冒険の準備2


イタチさんが来て部屋に呼ばれたので、サスケさんと一緒にイタチさんの部屋にやってきました。サスケさんと同じくさっぱりした雰囲気で、ご兄弟なんだなあと思ったりしました。

「モンスターボールは、一応10個やろう」
「……サンキュ」
「タウンマップはちゃんと持ってるか?」
「当たり前だろ」
「はは、そうか」

バカにされたと思ったのでしょうか、サスケさんはちょっぴり不機嫌そうです。イタチさんは机の上に置いていたモンスターボールを一つ手に取り、ボタンを押して膨らませました。中に誰か入っているのでしょうか。

「出てこい」

イタチさんがそう言うとボールが開いて中から誰かが飛び出してきました。白んでいた体が徐々に色付き、見えるようになってくる。

「こいつは……!」
「イーブイだ。こいつも連れていくと良い」
「ブイー」
「良いのか?」
「ああ」

サスケさんはしゃがんで、茶色くてふわふわなイーブイさんに手を伸ばしました。が、イーブイさんはそれをぷいとかわし、イタチさんの足に擦り寄りました。なんて勿体ないことを……! ……じゃなくて、酷いです!

「……」
「ほらイーブイ、サスケのとこに行け」
「ブイブイ、イーブイ!(やだやだ、イタチが良い!)」
「カゲ……」
「まいったな……」

どうやらサスケさんを嫌っているのではなくイタチさんにとっても懐いている所為だったようで、少しほっとした。サスケさんが誰かに嫌われるなんてイヤですから……。それにしても甘えん坊なイーブイさん……改めイーブイくんです。

「こいつはまだ子どもでな。そろそろ親離れの時期なんだが、どうにも……」
「ブイー!(やだー!)」
「……まさか厄介払いじゃないだろうな」
「はは、まさか。オレは、オレから自立できるようになって、強く育って欲しいと思ってるんだ」
「……」
「そしてサスケ、お前にはそれができると信じている」
「! ……」

イタチさんの言葉を聞いて、サスケさんは少し驚いた表情をしました。そして、……本当に小さく、嬉しそうに笑ったのです。私は、炎が暴れるのを忘れてしまうくらい見惚れました。

「……イーブイ、来い」
「ブイー…(やだよぅ…)」
「来るんだ。お前は、俺と行くんだからな」
「……」

サスケさんにこう言われ、イーブイくんはイタチさんをちらりと見上げて窺いました。イタチさんはそれに微笑みながら、サスケさんの方へ行くよう示します。するとイタチさんの足から離れようとしなかったイーブイくんが、そろそろと一歩、サスケさんに近付きました。ゆっくりと向かってくるイーブイくんをサスケさんはじっと待っています。真剣な目でイーブイくんを見つめ、片手を差し出しました。上目使いでサスケさんを見ながら、イーブイくんは恐る恐るサスケさんの手に頬を擦り付けました。

「……いい子だ」

その手でイーブイくんの頭をわしわしと撫で、抱き上げました。ああっ、羨ましい! ……じゃなくて、えっと……羨ましいです。

「結構重いな、お前」
「ブイ、ブーイ!(わーい、抱っこだ!)」

肩に担ぐようにして、イーブイくんを抱っこするサスケさん。……本当に、羨ましいです。私は抱き上げてもらうにはちょっと大きいかもしれないから、自分からは言えないし……。

「カゲ……」
「サスケ、ヒトカゲが寂しがってるぞ」
「カッ、カゲカゲッ(いっ、いえそんなことはっ)」
「ん? なんだ、お前もしてほしいのか?」
「カゲカゲカゲッ(いえいえそんなっ)」

ぶんぶんと首を横に激しく振って遠慮する。羨ましがっていたのがばれた恥ずかしさに、尻尾の炎がぽんぽんと跳ねてしまう。するとサスケさんは苦笑して、イーブイくんを床へすとんと降ろしました。イーブイくんはサスケさんの足に擦り寄っています。

「さすがに抱き上げるのはちょっとな……。おんぶならできそうだが」
「カゲカッ、カゲェ!(本当にっ、いいです!)」

大焦りして断る私を見てサスケさんはクツクツ笑っています。……あれ、もしかしてからかわれたんでしょうか。イタチさんまで笑っています。

「……カゲ……」
「本当に、可愛いパートナーだな、サスケ」
「ああ」

はぅっ、サスケさんに(間接的にですが)可愛いと言われてしまいましたっ! 照れて俯き、両手で顔を隠そうとする。サスケさんたちの笑う声と私の炎が弾ける音がよく聞こえます。イーブイくんも、楽しそうに鳴きました。
こうして早くも新しい仲間ができました。サスケさんとの旅が、もっと楽しみになりました!




【冒険の準備!】
(日記再録 投稿日 2008.12.09 Tuesday)


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