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浴衣でお祭り 1/4


 七月も半ばを過ぎて、もうすぐ夏休み。とはいえ浮かれている暇もなく、受験生の身である私たちには大量の課題が待っているはず。だけど高校生活最後の夏休みでもあるので、思い出を残したい気持ちも強い。

「今度の土日、花火大会があるんだってね」

 いつも通り、断られても仕方ないと思いながらも、そう切り出す。三年になってからは一度もデートをしていない。というかデートと呼べそうなデートは、実質去年の誕生日直前のあれ一回こっきりだ。クリスマスはサンタ服を着せられただけだし、初詣は一緒に行っていないし、バレンタインも自分で食べさせられただけだし、春休みも特になにもなかったのだから、ゴールデンウィークなんてなおさらそう。半年以上おあずけを食らっているので、できたらそろそろご褒美がほしい。

「どこでだよ」
「え、あーなんだっけ……ちょっと遠いんだけど、南のほうの……南賀ノ神社だっけ、あそこの」

 一も二もなく断られるのが常のため聞き返されると思っていなくて、用意していなかった返事をしどろもどろ繰り出す。サスケくんは購買のおにぎりを頬張りながら、「ふうん」と興味が薄そうに言う。脈ありなのかどうか分からない。
 とりあえずケータイを使って答え合わせをして、間違っていないことを確認しながらアクセス情報も見ておく。

「電車で行くなら、二回くらい乗り換えないといけないみたい」
「……遠いな」
「うん……まあ、無理にとは」
「行くか」

 え? ん?

「行く?」
「浴衣着て来いよな」
「あっ、はぇ」

 行くのーーー!?!?
 私が飲み込めないでいると、サスケくんはうざったそうに睨み付けてきた。ごめん、私も自分の処理能力の遅さにはうんざりしてるんだ。

「あわわ……」
「お前な……自分から誘っておいてそれはねーだろ」
「すみません……」

 呆れたようにそう言って、また一口おにぎりをかじった。
 サスケくんは痴漢の事件があってから態度が軟化したような気がする。なにがどう、という説明は難しいんだけど、無意味に私を責めるような物言いが減った、のかな? いじめられはしてます。

「浴衣、浴衣かぁ……買うと高いよね」
「安物でいいだろ、どうせ脱がす」
「ええっ、いや、まさかそんな……」

 まさかそんな、外でなんて、しないよね? しませんよね?
 どうか脱がすのは屋内でありますようにと祈るけれど、サスケくんはニヤニヤして「スリルあるだろ」とのたまった。いやーーーー倫理観のあるスリルにしてぇーー!
 とんでもない約束を取り付けてしまったと後悔するも遅く、サスケ君は目を光らせて「すっぽかすとどうなるか……」と脅すように言う。どっちにしても恐ろしい事態しか待っていないらしい。タスケテ。




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