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セイなる夜に 1/2


「これを着ろ」

 そう言って差し出されたのは、サンタクロースのコスプレ衣装でした。

(あっ終わったな)

 まずそう思った。折角のクリスマスイブなので、ほんのすこ〜しデートとかプレゼントとかケーキとかを期待していなくもなかったのだけど、当日の午後六時に電話で呼び出されてコレ。クリスマスはこれを着てエッチして終わりだ、という宣言に他ならない。去年はクリスマスのクの字もないくらいのスルーっぷりだったので、今年こそはと冬休み前からそれとなく今日の予定を尋ねてはいたのだけど、「別になにも無い」と言っていた。それはつまり「お前とのデートの予定も無い」ってことだったんですねあっははは。

「(知ってた〜……)」
「早く受け取れ」
「はい……」

 内心涙を流しながら、透明の袋に入ったサンタコスチュームを受け取る。念のため用意しておいたクリスマスプレゼントは、このまま何事もなくコトが済んだら処分しよう。ていうか自分で使おう。ちょっといいペンだから捨てるのは勿体ないもんね。
 袋からガサガサと服を取り出し、広げてみる。わあい、キャミソールタイプのミニスカサンタさんだぁ。エッチでかわいいね、あははは。これをド○キかどこかで買うサスケ君の姿が脳裏に過ったけれど、瞬時に抹消しておいた。たぶん通販だよあはは。
 私が遠い目をしながら恥ずかしいコスチュームを眺めている間に、サスケ君は暖房の温度を弄っている。そういう細かい気遣いができるとこは嬉しいよ。でももっと大きな目で見て。こういうの求めないで。はあ〜縛られるほうがコスプレより慣れてる分いくらかマシだよ〜〜。

「えっと……」
「早く着替えろ」
「えーっと」
「ここでだぞ」

 ベッドに腰掛けて、退室する気配のないサスケ君。うん、あのー、電気消してもいいですか。ダメですか。そうですか……。
 暖房を強めたとはいえ、まだ肌をさらしても平気なほどの気温にはなっていない。サスケ君は私が脱ぐのを見るために待っているようで、目を逸らしたりケータイに気を取られたりしてくれない。いくら何度もやっていることとは言え、そうまじまじと見られると恥ずかしいしやりづらい。もっとエロく脱げとかいちゃもん付けられそうでヤダ。

「もっといやらしい脱ぎ方をしろ」

 ほらぁ〜〜〜。無茶振りだから〜〜〜〜。
 サスケ君の発言をスルーして、背を向けながらさっと脱いでさっと着た。寒さを感じる暇も無かった。チッと舌打ちが聞こえたけど、着てあげただけでも感謝してほしいくらいだよこっちは。
 丈の短いスカートを引き下げるように手で押さえながら振り返る。お尻が大きいせいで、こうしないとはみ出てしまう。胸の部分も少し苦しいし、サイズが間違ってるんじゃないかなぁ。私のおっぱいは本当に、いつになっても恥ずかしいほど大きい。

「うぅ……」
「…………あまり期待はしてなかったが、いいもんだな」

 なにその感想、全然嬉しくない。全然、嬉しくなんて、ないもんね。
 照れながら、最後にサンタ帽を被る。赤を基調に白いふわふわの、サンタクロースコスチュームの完成だ。親に見られたら泣く。

 サスケ君は私をじろじろと眺めるのをやめて、ケータイに手を伸ばした。はっとして咄嗟に止める。

「ダメッ!」
「いいだろ別に。撮らせろよ」
「ダメダメダメダメ! 絶対ダメッ!」

 今この時だけ、と思って頑張って我慢してこんな格好をしているのに、それを永劫写真に残されたりしたらたまったものじゃない。最悪叩き割る覚悟でもって全力でサスケ君の手を掴んでいると、やれやれとため息を吐かれる。

「そんなに嫌かよ」
「嫌だよ無理だよ絶対ヤダ……」
「分ァかった。痛いから放せ」
「あっ、ごめん」

 サスケ君の言葉に慌てて手を放す。私が痛い目にあうのは茶飯事だけども、サスケ君を痛がらせることはそうそうない。報復が恐ろしいというのもあるけど、一番は『私にそんな趣味は無いから』だ。
 サスケ君は思っていたよりもあっさりとケータイを手放してくれ、その代わり私の手を掴んでゆるりと引き寄せた。いざなわれるままに、ベッド端に座るサスケ君の足の間に、背中を向けるように座らされる。短いスカートはなんとかギリギリ私のお尻を隠してくれている。

「せっかくオカズにしようと思ったのによ」
「う、んんん……」

 嬉しいような、喜んではいけないような、微妙な発言。もにょもにょと声をこぼす他ない。
 おっぱいを揉むために、肩の上からサンタ服に手を差し込まれる。キャミソールタイプだから邪魔する布も少ない。ブラジャーを押し退けて、わっしと脂肪を掴まれる。

「お前のカラダは本当にいやらしいな」

 雄を誘惑する形状でしかない、とやや客観的な意見。たしかに素早く動けるわけでもないし、防御力が高いわけでもない。何に特化しているのかといえば、おっぱいとお尻の大きさや形は、男の人が喜ぶものだ。分かっていますとも、もう何年もそこらの男性からそういう視線をぶつけられてきましたから。

「…………」
「褒めてやってるのに、なんて顔してんだ」
「……んんん」

 正直、嫌な思いばかりする、嫌な体型だと思っている。サスケ君も、私のカラダが好きでこうしている。体型がこうであれば、私以外の誰でも良いのかもしれない。そう感じるから、なおさら自分の身体は好きじゃない。
 私が暗い顔をしているから、サスケ君も流石に服の中から手を引いた。私のおっぱいがもっと小さかったら、私自身を好きになってくれただろうか。その可能性は限りなく低い。

「なあ」
「……ん」
「お前は、お前の身体を自分の一部だと思ってないのか?」
「?」

 サスケ君の言葉に、少しだけ後ろを振り向く。サスケ君の顔までは見えない。

「お前の身体とお前の心は、別々に存在してるのかって言ってるんだ」

 その言葉を噛み砕いて理解するのに少しだけ時間がかかった。言われてみれば、身体があって脳があって、それから私が存在している。それらは必ず、同時に存在するものだ。
 漫画や映画の世界の中で、『中身が入れ換わっちゃった』とか、『脳の移植』とか『機械の身体』とか『前世の魂の生まれ変わり』とかで、器と中身は別に存在する、という概念を、なんとなく抱いていた。だけどそれはあくまでもフィクションや迷信であって、現実には起こり得ないこと。
 身体の成長と共に私の人格は育ち、私の人格は身体の成長と共にある。脳のバグにより多少の認識のズレはあれど、それは間違いのないこと。

「お前の身体はお前自身だ。人格がお前自身なのと同じように」
「うん……」
「他人からの評価の割合は見た目重視だが、それの何が悪いんだ。お前だって俺が『この見た目』じゃなかったら、普段の仕打ちを許せるか?」
「……えーと」

 イケメンだから言えるセリフだ。そしてイケメンの自覚があるからこそ言える。すごい。感心してしまった。解ってやってたのか……。

「大体、すでに言ってあるはずだ。俺はお前の、すぐ泣きそうになるとことか、なんだかんだ気持ち良さそうによがる声とか、リアクションのほうが好きなんだよ」
「そ、そうでした……」
「胸や尻がでかくて、それを恥ずかしがってるとこなんて最高だな。120点やろう」

 わあ、両方を褒められてるけどなんか素直に喜べない。
 サスケ君好みである、というのを120点でクリアしているということ自体は、嬉しいけれど。五分五分なんじゃないの?

「割合か? 反応100、身体20だ」
「反応だけで100点取ってる!?」
「ああ。さっきのスカート押さえてる仕草も、すげえ興奮した」

 そう言いながら、抱き寄って、押し当てられる。はい。とっても硬いデスネ。
 どうにもこうにも、『サスケ君が私を慰めてくれた』というのが嬉しくて、頬が緩むのを抑えられない。あのサスケ君が、こんなに饒舌にフォローしてくれるなんて……。これが聖夜の奇跡。ありがとう神様。ありがとうサスケ君。ちょっと気持ちが楽になりました。

「もし仮にお前が貧乳だったとして、それもどうせ恥ずかしがるんだろ」
「……そうかも」
「ならもう、どっちだって良い。揉みごたえがあるだけ、巨乳でラッキーだったって程度だ」
「う、!」
「もっとも、俺は尻のほうが好きだがな」

 言いながら、太ももの外側を撫ぜて、お尻へ手を滑らせる。白いファーのような毛で縁取られたスカート部分を、敢えてめくらずにそのまま揉んでいる。

「で」
「“で”?」
「俺がこれだけ慰めてやったんだ。礼のひとつも貰わないとな」

 んんん。予想はできてました。こんなに良くされて、サスケ君がそれを建前にしないわけはない。

「……なに、したらいい?」
「フッ、話が早いな」

 従順な私の返事に、嬉しそうな吐息が耳に掛かる。だって、サスケ君の言葉に少し救われた気持ちがしたのは本当だから。嬉しいことをされたら、お返ししたくなるのは普通だよ。
 照れくさいのを隠すようにサンタ帽を少し下げながら、サスケ君の顔が見えるように斜めに座り直す。私の顔を見て、にまりと笑みを浮かべる。

「そうだな、手始めに下着を脱いでもらおうか」
「し、下着だけ? サンタはそのまま?」
「当たり前だ。せっかく着せたんだ、まだ着ててもらうぜ」

 背筋を指先で撫でられ、びっくりして背が伸びる。ブラジャーのホックのあたりを、早く外せと言わんばかりにくりくりと押される。それに従って、少し背を反らして両手を後ろに回し、服の上からホックを外した。ブラが浮いてますます胸元が目立つので、それをなるべく早く解消しようと手早く肩紐を腕に通して外す。

「わ、」

 あとは胸元からブラジャーを取り出すだけ、というところで、サスケ君がそこへ手を突っ込んだ。ごそごそとまさぐられ、ずるりと引っぱり出されて、すぐには放らずに一瞬匂いを嗅がれる。好きだね……。

「あんまりしないな、お前の匂い」
「そりゃあ、汗かいてないし」
「なら、こっちはどうだ?」

 ぽいとブラジャーを捨てて、その手で私の太ももの間をまさぐる。

「ま、まだ……じゃないかな」
「そうみたいだな」

 私のパンツをこする指先。割れ目を探るような動きに、そこがむずむずとうずく。ちらりとサスケ君を窺えば、気付いて目を合わせられて、そのままキスされる。
 初めに軽く歯を立てて、それから食べるみたいに唇で挟まれる。わざとらしいほどの荒っぽいキスに、ドキドキと鼓動が高まってくる。舌を差し込まれ、誘われるままに絡め合えば、舌裏の性感帯を攻められて声が漏れた。

「んっ、」
「キス、気持ちいいか?」

 問われながら、私の意識の半分は、キスの間ずっと撫でられ続けている陰部。クリトリスに触れないのはわざとなのか、割れ目の部分のパンツの布を、押しすぎないように優しく、それか焦らすように、すりすりと軽く撫でている。
 少しずつ、頭にもやが掛かるようにぼんやりとしてくる。キスも、嬉しさと快感が合わさった気持ちよさだし、サスケ君に触れられていることそのものが嬉しくて、それが股の間であることはどうでもいい。
 ぼーっとしてサスケ君の問いに答えないでいると、意識をそちらへ向けるように、軽く唇を噛まれた。

「!」
「フッ、やらしい顔しやがって」
「ん、んん……ごめん」

 だって、サスケ君とエッチなことするの、嫌じゃないもん。拒絶するつもりがないから、受け入れているだけだよ。
 とはいえ恥ずかしくて、少し耳が熱くなる。すっかりなすがままモードになっていた。最近そうなるのが早くなっている気がする。『強引なサスケ君』を諦めたのではなく、『それが好きな自分』を受け入れたのだけど。

 パンツ越しに愛撫をしていた手を股の間から抜き出して、それを私の鼻の前へ持ってこられる。反射的にその指先を嗅げば、ほんのりうっすらエッチな匂い。

「どうだ?」
「どう、と言われても……」

 恥ずかしいです。はい。
 私が目を泳がせていると、サスケ君も同じようにして嗅いで、満足げに「ん」とこぼした。好きですね。
 満を持して「脱げ」と命じられて、スカートはそのままにパンツを引き下ろす。少しだけ濡れているその小さな布を、片足ずつ順に通して脱いだ。服は着ているのに肌着も下着も無いのが、なんだかスースーして変な感じだ。

「貸せ」
「……ヤダ」
「ケチくさいこと言うな」

 一応お断りしてみるけれど意味は無し。手からパンツを引ったくられて、においを嗅がれる。顔汚れても知らないよ。

「人によってにおいも違うもんだが、お前のが一番マシだな」
「ええ……それ、……ええ……」

 そりゃサスケ君が色んな子と経験あるのは知ってるけど、それを暗示することを私に向かって言うのはどうなの。そして『マシ』ってことはやっぱりそんなに気分のいいにおいではないってことなんじゃないのなんで嗅ぐのわざわざ。

「なんだろうな。本能的に嗅ぎたくなるんだろ」
「ふぅーん」
「なにを拗ねてんだ」

 過去のことは過去のことだろ、とサスケ君は言う。それはそうだけど蒸し返すほうが悪いよ。
 ひとしきり嗅いで満足したらしい私のパンツを放って、機嫌を取るようにやや優しくおっぱいを揉む。おっぱいを揉まれたからってそんなに簡単に機嫌が直ると思ったら大間違いのはずなんだからね。首元に優しくキスしたり、耳たぶを唇で噛んだりしても、別に、機嫌が直ったりなんか、

「っ、」
「感じてるのか?」

 耳に、サスケ君の熱い息がかかって、ビクリと肩を震わせてしまう。その息が少しだけ上がっているのは、私のにおいを嗅いで興奮したからか。ぐいぐいと股間を押し付けているのが、少しでももどかしいのを誤魔化そうとしているよう。
 手首を掴んで、無理矢理に股間を触らされる。チノパンのジッパーを割り開けそうなほどに反り返り、窮屈そうにベルトを押している。

「俺のことも脱がしてもらおうか」
「え、」

 私が? サスケくんを脱がすの?
 紺色無地のネルシャツは自分でボタンを外し始めたけれど、主張の激しいズボンのほうは私に“やれ”と顎で命令される。ひええ、こんな暴れん坊将軍をわたくしめが?

「ええっと、えーと……」
「とろい奴だな。まずはベルトだろ」
「は、はいっ」

 言われた通りに、ベルトに手を掛ける。ベルト通しから余った帯を引き抜いて、ベルト穴からバックルのバーを引き抜くように軽く引っ張る。それから前を開くようにスルスルとバックルからベルトを抜いた。
 その間もズボンの下でピクピクと動くものだから、なんだかドキドキしてしまう。ちらりと顔色を窺えば、後ろ手を突いてこちらを見ていたサスケ君と目が合う。だけど私よりもサスケ君のほうが先に、俯いて視線を外した。

「……早くズボンも開けろ。キツくて仕方ない」
「う、うん」

 言われるままにズボンの金属のボタンを穴から外すと、下から突き上げられたジッパーは、私が触る前にいくらか開いてしまった。中途で止まって浮いた金具を摘まめば、ほとんど力を入れなくてもつるつると開く。その内側では下着の薄布が、棒状のものに下から突っ張られながらもなんとかそれを隠していた。
 パンツに隠された状態の勃起したおちんちんを見るのが珍しくて、つい撫でる。するとそれを押し返すように動いて、濡れた部分に指が触れた。

「おい……」
「あ、ごめん。つい触っちゃって」
「ド淫乱かよ」
「そ、そういうんじゃなくて、好奇心というか……」

 そう会話しながら、またちらりとサスケ君を窺うと、口調のわりに余裕がなさそうな顔だった。表情が乏しくて、目が据わっている。ため息のように呼吸を整える音が聞こえる。
 見られて、る。
 そう思うとまたドキドキしてきたので、少しずれたサンタ帽を直す二秒の間に気持ちを落ち着ける。

「えっと、真下に下ろすと引っ掛かるから……」
「こうすりゃいいんだよ」

 どう脱がせばいいのやら、と勝手が分からずに手をうろうろさせていると、サスケ君が手本を見せるようにパンツのゴム紐部分をびよんと上に持ち上げた。それでついでに『山』も軽く越えさせてくれたので、あとは下げるだけでいい。
 両手の指を下着と肌の間に差し込んで、そっと引っ張り下ろす。脱がしやすいように少し腰を持ち上げてくれたので、さらにグッと下ろして、膝までを露わにした。ムダ毛の少ない綺麗な肌だなぁ、なんて感心する間もなく、足からズボンを剥がすようにもう一息引っ張りきる。

「よ、っと」
「お前に介護は任せられねえな」
「そだね……期待しないでね」

 やや裏返しになったズボンと下着を元に戻してから、私の服の側にそっと置く。ここまでの流れで、ベッドに腰掛けたサスケ君の前にしゃがむ形になっている。肌着代わりの薄手シャツだけを残したサスケ君を見上げる時に、ソレをちらりと盗み見れば、天井を仰ぐようにして立派に勃ち上がっていた。
 指示を待つようにそわそわしていると、サスケ君はサンタ服を着せられた私を見下ろして呟く。

「こういうコスプレAVも見たことはあるが、こうまではならなかったな」
「え、そういうのってR指定があるんじゃ……?」
「兄貴が借りてきて俺に寄越すんだよ」
「(なんで?)」

 不思議な兄弟関係はこの際置いておくとして、ビデオでは満足できなかったものが私なら十分に興奮できるそうで、嬉しいやら、嬉しいやら……。いや嬉しく……嬉し…………うれしい……っ、悔しいけどうれしい……!
 頬がにやけるのを抑えきれず、隠そうとして口元をぐにぐにと動かす。結果的にただの変顔になったので、サスケ君に「変な顔するな」って頬をつねられた。

「いたい、いたいぃ」
「フッ、不細工だな」
「ひどい……」
「とりあえず横になれ」
「え、」

 てっきりこのままフェラをさせられるのかと思っていたのだけど、そうではないらしい。言われるままにベッドへ上がり、サスケ君に見られながら寝転がる。
 パンツが無いから違和感があるし、スカートが短いからめくれそうで恥ずかしい。見えてしまわないようにふわふわの裾を少し下に引っ張りながら、サスケ君の出方を窺う。私の足のほうへ移動して、そこから寝転ぶ私を下から上へ、ゆっくりと観察するように視線を動かした。

「……隠しカメラでも仕掛けておくんだったな」
「! そんな恐ろしいこと考えないで……!」

 今この状態ですら恥ずかしいのに、この後のことまでもが映像に残るだなんて無理無理無理だ。映像として残るだけでも無理なのに、サスケ君はそれを度々見るつもりで撮るのだから、好きなときに今日のことを思い出して耽られてしまうということ。そんなの、そんなの、

「(……んんえ…………私は自分で思ってるよりずっと変態だった……) 」
「? どうした」
「んんと、ビデオ一本につき100万円ね……」
「高えな」

 軽口を笑いながら、サスケ君は私の脚へ手をやった。すねから骨づたいに、膝に指先を滑らせ、太腿を手の平全体で掴むようにしながら上下に撫でる。指の付け根がスカートに掠めると折り返して、ゆっくり、何度も、私のやや太すぎる太腿を愛でる。
 脚のほうへ顔を俯けたまま、時々窺うように視線をこちらへ向ける。もっと性急に事を進めるものだと思っていた分、じっくりと手触りを楽しまれてドキドキする。なんならいきなり入れられるか、とさえ思っていたのに普通に前戯されるみたいで……。いや、うん、焦らされてるとまでは思ってません。思って、ません。
 サスケ君の股から上向きに生えるモノが、時折ぺちぺちと私の脚に当たる。いつも大きいけど、今日はなおさら……

「なんだよ。物欲しそうに見やがって」
「えっ! いやあの………当たるから…………」

 にょろにょろと視線を逸らせば、はっ、と笑いともため息とも取れない、息を吐く音がした。

「俺も入れたいのは山々だがな」
「(なんで仕方なさそうなの)」
「その前に」
「!」

 膝裏に手を差し込まれ、ぐいっと持ち上げられる。お尻まで浮くかと思うほどの勢いで、そのまま膝を開かせられれば、短いスカートの奥が恥ずかしいほど露わになる。いきなり空気が当たるようになって、スースーして冷たい。

「すげぇよだれ(、、、)だな」
「っ、……」

 股のほうは隠させてもらえそうにないので、代わりにサンタ帽で顔を隠す。唾を飲み込む音が聞こえて、恥ずかしさに股の奥が熱くなる。

「陰毛に糸が引いてる」
「(言わないで言わないで恥ずかしい)」
「ああ……」

 感嘆の漏れ声と同時にベッドが軋む。嗅ぐように鼻を鳴らして、それからうっとりとこぼす。

「うまそうだ」

 言葉と共に、濡れた割れ目に熱い息がかかる。それにひくりと反応してしまうと、サスケ君は嬉しそうに笑う息をもらした。
 べろり、とやわくてざらついたものが割れ目を這った。それから舐め取った汁を飲み込む音がして、体液を飲まれた恥ずかしさと陰部を舐められたことを恐縮するような気持ちと、そのどちらをも嬉しく思う後ろめたさがないまぜになって、「うえぅぇぅ……」とよく分からない声を出してしまった。そしてまたひくひくと股がうずくのを、慰めるように舌が這う。

「ぁ、やだ……!」
「恥ずかしいか? 喜んでるようにも見えるがな」

 反論できずに、感じさせられるままうーうーと小さく唸る。少しでも声を隠そうとサンタ帽で口元を押さえるけど、あまり意味はなさそう。
 ヒダ周りを綺麗に舐め終わった舌が、割れ目の頂点へ迫ってくる。まだ隠れているらしい芽を、舌先でつつき、舌腹でころころと転がされる。愛でられて少し膨らんだそれを、唇で挟んで軽く吸い出し、敏感な部分を露出させられる。

「ンぁッ、あっ!」

 強い刺激に、ビクンと腹ごと跳ねた。弾け出てしまった声は取り戻せず、恥ずかしさに歯を食いしばる。露骨に反応を示した私に、サスケ君は気を良くしたようで、楽しそうにクリトリスをいじめ続ける。その気持ちよさにビクビクと腰をふるわせながら、みっともなく喘いでしまわないように必死で声を抑えた。

「ンッ、ふ、……ンンッ!」
「我慢せずに、さっきみたいに声上げろよ」
「や、だァ……ッ!」
「……そうか。なら、出させてやる」

 言ってすぐ、ビリビリとした甘い電流が私の弱点を襲った。

「ヒぁッ! アッ、ぁあウーッ!」
「どうすりゃお前が鳴くかなんて、全部分かってんだよ」

 前に似たような感じ方をしたとき、『舌の付け根から腹までを使って舐めた。結構疲れる』と教えてくれた攻め方を、たぶんしているのだと思う。だけど今はどうやって舐めているかなんて感じ取る余裕は一切なく、襲い来る快感に身を悶えさせることしかできない。

「ウゥ、! ンぅぅアッ! アアッ、ヤぁアッ!」

 少しでも堪えるためにか、足も腹も手も顔も、絶え間ない刺激に反応して力が入る。腿は痙攣し膝を狭め、お腹は体を縮こめるようにこわばり、助けを請うように首を左右に振り、顔はきっと不細工なほどくしゃくしゃになっていて、腕は縋れる場所を探すように布団の上をさ迷い、結局シーツを握り締めた。
 攻め手を休めることもせず、私を鳴かせ続けるサスケ君が、小さく笑い声をもらした。自分の思い通りに喘ぐ私にご機嫌なのか。体を痙攣させすぎて疲れてきた私は、待ったをかけたくて無理矢理にサスケ君のほうを向く。キャミソールサンタ服の、白い綿に縁取られた裾から垣間見えたサスケ君は、だけどほとんど真顔だった。

「(あ、)」

 焦点の定まらないうつろな目と、シワを寄せない眉、つり上がらない頬。股にかかる息は熱くて、ハアハアと激しく上がっている。その余裕のなさそうな様子に、それほどに興奮されているんだ、と感じて嬉しくなってしまった。奥がきゅぅんとして、絶頂へと一歩足を掛ける。

「ァアッ、アーッ! だめ、イッ、いっちゃ、……ッ!」
「ハァ、んん、」

 オーガズムへの上り道を、サスケ君にぐいぐいと押されて突き進む。歯を食いしばり、涙のにじむ目を閉じ、眉を寄せ、喘ぎ声をだらだらと口からこぼしながら、体を縮こませる。サスケ君の頭を挟む太腿にまでありったけ力を込めて、

「イクぅ、イク、ゥウ、うあ、ァアアッッ!」

 大袈裟なほどに腰が跳ねて、背中が丸まる。訪れた到達感と、強い疲労感。ぜえぜえと乱れている息を整えたいのに、途切れない甘い刺激に体の痙攣が止まらない。

「やァ、サスケく、やァァン……ッ」

 やめて、の一言すらまともに発せないけれど、それでもなんとか懇願する。だけどサスケ君は聞く耳持たずで、夢中で私の股を舐めている。
 このままでは疲労と酸欠でどうにかなってしまう、と思い、強引に体を捻って逃れた。

「あ? おい」
「だ、だって、はぁ、む、むり、」
「お前が無理だろうが知ったことか。俺が舐めたいんだから舐めさせろ」
「やだやだ!」

 思い切り首を横に振って、ずりずりと這うようにしてベッドの端へ逃げた。サスケ君は不機嫌そうに顔を歪めて盛大に舌打ちをし、私の足を掴む。

「気持ちよくしてやろうってのに逃げてんじゃねえ」
「ほどほどで、ほどほどでお願いします!」
「俺が満足するまでよがってろ」
「ヤだぁ! ヤだぁ!」

 下手に足を暴れさせるとサスケ君を蹴飛ばしてしまう危険があり、そんなことをしてしまえば状況が悪化することは分かりきっているのでするわけにいかず、必然的に口だけで抵抗することになる。『嫌がる割には大人しい』状態ではあるけど、無理なのは本当だ。
 胸が窮屈なサンタキャミでもなんとか体を丸めて、防御の姿勢をとる。肝心のお尻部分がろくに防御できていないのはご愛嬌として、それを見てサスケ君は渋々私の足から手を放した。シャツで口元を拭きながらなにやらブツブツと不満そうにして、方向転換してベッドサイドの棚からゴムの箱を取った。

「クンニしながら太腿に挟まれるの、最高に良かったのによ……」
「……えーと、もうちょっと休憩させてほしいんだけど……」
「この状態で“お預け”させようとは、とんだ鬼畜だな」

 ギン勃ちのモノを指して言う。いや、うん、あの、この状態で入れようっていうのもなかなか鬼畜なのではないでしょうか。
 基本的には私に拒否権はないので、ないものを無理矢理使った直後では尚更聞き入れてもらえない。サスケ君の股間で怒張してピクピクしている凶器に、ゴムが取り付けられる。邪魔そうにシャツを脱ぎ捨て、丸まったままの私の腰をむんずと掴んで、ベッドの中央に引きずる。掴まれたときに、絶頂の余韻にビクッと震えてしまう。

「そら、お前ももっと良くなりたいんだろう?」
「ち、ちがうよぉ……」
「ふん。どっちでもいいことだけどな」

 私があんまりイヤイヤ言うからか、拗ねたように鼻を鳴らしてサンタキャミの裾を捲った。最初の頃は「嫌がる方が燃える」とか言っていたけど、これはそれには含まれないんだろうか。
 サスケ君は私の後ろで、四つん這いの私を見下ろしている。拒否権もないことだし、やっぱりちょっと休憩したいとは思いながらも仕方なく、腰を持ち上げてサスケ君の入れやすい高さにする。ほんの少しだけ乱れた息遣いのサスケ君は、強めに息を吐いてから「さて」と気を取り直すようにして言った。

「サンタさんには、プレゼントを貰わないとな」

 サンタ“さん”。意外にかわいらしい物言いをするのだな、などと思っている間に、ひたりと入口に先端を添えられた。添えたと認識してすぐに、それは半ば強引に私の中へ侵入してきた。

「ぅくゥッ」

 ズグッ、と内壁を押し退けて犯される感覚に、押し出されるようにして声が出る。入れきってサスケ君の腰がお尻にぶつかると、たぷんっと柔らかい音が鳴る。

「お前の尻は、全く最高の心地だな」
「ヒッ、んッ、んんゥッ!」

 私の中を硬い肉棒が前後するたびに、粘着質な液体が空気とまざって泡立つ、イヤらしい音がする。気持ちいいところを突かれていることもそうだけど、そういう音や、サスケ君が太くて硬くて興奮の只中である、という状況諸々が合わさって、私は高まっていく気がする。

「お前の尻に腰をぶつけるためにセックスしてるようなものだ」
「んァッ! ぅぅ、そんなにぃ……?」
「ああ」

 背後のサスケ君を見ようと首を捻れば、サスケ君は私のお尻を見下ろすようにして俯いていて、私の視線に気付くとそのまま上目でこちらを見て、目が合った。やっぱり少しとろんとした表情で、いつもみたいにニヤニヤ笑ったりしていない。ああ、この顔、好き。
 イッたばかりなのも相俟って、擦られる度にビクビクと反応してしまう。じゅっぷじゅっぷ、ぐりぐり、パチュンパチュン、と好き勝手に私を犯すサスケ君の、呼気が荒くなってきたのを聞いて、私も一段階気持ちよくなる。

「アッ、アッ! ァアんッ! 」
「ハァッ、ハァッ、いい声だな、紫静」
「イッ、ンンッ! だっ、てぇぇ……ぅあんッ!」

 気持ち、いいんだもん。サスケ君とエッチしてるの、嬉しいんだもん。ああ、ああ、うう。
 名前を呼ばれると、エッチしてるんだな、と思うくらいには、エッチの最中にしか呼ばれない。だから平時に不意に呼ばれたりすると、パブロフの犬よろしく股の奥がじわ……と熱くなってしまったりして困る。もしかして狙ってやってるんだろうか。それともサスケ君も、私の名前を呼ぶことで「私を犯している」という実感が強くなって、気持ちいいんだろうか。そうだとしたら、何故だかはわからないけど、嬉しいな。

「イッ……く! イクぅ! サスケくぅゥ……ッ!!」

 手近にあった枕にぐしゃぐしゃになった顔を埋めて、再び訪れる絶頂へ身を委ねる。側に転がるサンタ帽が一瞬目に入って、そういえば今自分はそんな格好をしているんだった、と思い出す。思い出しながら、だらしない声を上げて、一層強く身体を震わせてイッた。

「ぅアアゥ……ッ!」
「ハッ、ハァッ! イッたか? かわいいなァ、紫静」
「!? ふぇえアッ……!?」

 驚いて枕から顔を上げた。だけどサスケ君の口から出た言葉に耳を疑う間に、サスケ君は腰を振る速さを増してガクガクと私の奥を攻めたから、また枕に顔を沈めることになった。サスケ君がイク時の動きだ。
 休む間もない快感の嵐にヒンヒンと鳴き声をこぼしながら、涙を滲ませる。そうしながら、私を貪るサスケ君を見ようと、なんとか顔だけを後ろに向けた。
 感触に集中するように瞼を下ろして、しかめるように眉を寄せて、半開きの唇から短く荒い呼気が吐き出されている。イキそうな時のサスケ君の表情は、うまく形容できないけど、ともかくとてもエッチだと思う。

「(ああ、サスケ君、)」
「ハァッ、ハァッ! ン゛ッ、うう……ッ!」
「あっ、……あっ、」

 唸るのと同時に、律動が止まる。中身を押し出すように縮こまるたまがひくひくと当たって、サスケ君が今まさに射精していることが伝わる。なるべく奥で発射したがるように、ビクンと腰を震わす度に奥側へ先端を押し付けられる。
 私の中でイッてくれるとすごく嬉しい。サスケ君は私の身体で気持ちよくなったんだ、と実感するからだろうか。それとも本能的な悦びだろうか。

「(いつの間にこんなに、やらしくなったんだろう……)」

 冷めやらぬ興奮を表すように、終わったというのになかなか息が整わない。私の中からサスケ君が出ていくのを見届けてから、疲れた身体をこてんと転がした。

「はー……」
「……ぅー……」

 横になると、途端に眠気が襲ってきた。寝てはいけない、と思いつつ、気だるさに抗う気力も尽き果てて、下がる瞼を止められない。ティッシュを取るためにサスケ君がサイドチェストに向くのだけは見えた。
 このまま寝たら、サスケ君に「満足に事後処理もできないのか」と翌朝嫌味を言われるのだけど、それくらいのことはもう慣れっこなので、天秤に掛ける間もなく睡魔に軍配が上がった。せめてサンタキャミを着替えたかったなぁ……。





 脱ぎ散らかされた服は部屋の隅にある籠へ放り投げられ、箪笥から部屋着が取り出される。
 あられもない格好のまま眠りに落ちた彼女を見下ろして、苛立ちと譲歩が混在した息を鼻から吐く。散々よがらせて疲れさせてしまったことは自覚しているようだ。しかし物足りなさそうに、ベッドに腰掛けてその太腿を撫でた。

「まだ夜は長いってのによ」

 疲れによる寝落ちから、開いたままの口から寝息を溢す彼女に、恨みがましく言う。部屋着のズボンの内側で、まだ元気よく上向きになっているのだ。
 別に、眠っている彼女のサンタコス姿で耽って、このむちむちの太腿に雄汁を掛けてやっても良かったし、尻丸出しの寝姿やどろどろに濡れたままの陰部の写真を勝手に撮ってしまっても良かったのだが、なんとなく、しない。
 腹立ちまぎれのように彼女の鼻を軽く詰まむが、起こすつもりはないらしい。

 サイドチェストの引き出しを一つ開けて、中から箱を取り出す。プレゼント用に包装されていたものをビリビリと開けて、蓋を外す。中には細長い紐、もとい首輪、もといチョーカーが入っていた。
 模様もなく真っ直ぐでシンプルな、細い帯状の紐。黒に近い紫の、シックな色合い。その中央に、涙型の小さなチャームが付いている。
 それを、眠る紫静の首へ、こっそりと着けた。涙の裏には小さく『S's』と彫られており、“Sのもの”と所有を示している。
 首輪を着けられた紫静を見下ろして、にんまりと満足げな笑みを浮かべる。ベッドを軋ませながら身を屈め、その首へもう一つ、所有印を付けた。

 彼女がチョーカーに気付くのは、明日の朝シャワーを浴びるために脱衣場へ行き、洗面台の鏡が視界に入った時だろう。だけど裏面の彫刻に気付くのは、もっとずっと後のことになりそうだ。



おまけ→


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